売上高は357億円(2018年6月期)と3年で3倍に、MAU(月間利用者数)は1236万人と4年前の15倍。従業員数は1600人超と2年前の5倍近くに――。メルカリの事業と組織が急拡大している。2018年6月には東証マザーズ市場に上場し、この2月にはスマホ決済サービス「メルペイ」の提供を始めた。2014年に進出した米国事業のアクセルも踏み込む。サービス自体の強化に加え、2019年は認知度やブランドイメージの向上へ投資を増やす。
事業と組織が急成長する一方、経営幹部や社員の中には先行きへの危機感も広がる。事業強化や意思決定のスピード、サービスの使い勝手や品質…。サービスを動かすシステムの構造が複雑になり社員数が増え続ける中、これまでの勢いを維持できるのか。
「今のままエンジニア数が1000人を超えたらメルカリのアーキテクチャーは崩壊しかねない」。2017年初夏、CTO(最高技術責任者)を務める名村卓執行役員は山田進太郎会長兼CEO(最高経営責任者)と同社の先行きを議論していた。当時のエンジニア数は100~120人規模。山田会長は1000人を超えるのは2020年ごろとみていた。
組織としての停滞を回避し「世界的なマーケットプレイス」になる目標を達成するため、メルカリはIT戦略に活路を見いだす。
「日本を代表するテックカンパニーになる」。2018年6月、マザーズ上場の記者会見で山田会長はこう宣言した。目指すのは、ズバリGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)。「テックジャイアントと呼ばれる海外企業」(同)が目標であり想定するライバルだ。顧客に提供する製品やサービスの水準でGAFAを目指すだけではない。浜田優貴取締役CPO(最高プロダクト責任者)は「エンジニアリングのスキルでも差異化し、システム開発などに関する新たな技術自体を生みだせる企業」を目指すと語る。