テックカンパニーを目指すメルカリが最重要技術と位置付けるのがAI(人工知能)だ。製品の機能強化から品質の改善、顧客サポート、従業員の生産性向上まで、AIを徹底活用する。目指すは全社員がAIを仕事の必須道具として使いこなせる会社だ。
「2019年はAIを中心にした経営を目指す」。小泉文明社長はメルカリの経営方針をこう宣言する。製品の機能強化から品質の改善、顧客サポート、従業員の生産性向上まで、AIを徹底活用する。
足元で最も目立つのが主力のフリマサービスにおける機能強化やサービス品質改善へのAI活用だ。商品を出品する際の手間を徹底的に削減し、利用者がスムーズに出品できるようにする。
スマートフォンのカメラを商品にかざすと、メルカリアプリの画面には商品名やスペック、推定販売価格など入力すべき情報が自動的に現れた。内容を確認し、「出品する」ボタンを押すと作業は完了。商品の情報を一切入力することなく、ものの2分ほどで出品作業が完了した――。
メルカリがAIで目指す出品作業の理想像だ。「売ることを空気にする」。小泉社長は目指す世界をこう表現する。AIによってデータを入力する手間を一切無くす。既にプロトタイプを開発済みで、カメラやノートパソコンといった商品についてはほぼ実現の見通しがついているという。
同社がAI技術を本格的に導入し始めたのは2017年だ。現在はスマホで写真を撮ると商品名やブランド名、カテゴリーなどを自動的に推測できるようにした。書籍やゲームソフトなど、分野によっては販売金額も推定して1分以内に出品できるという。「米国向けサービスでは利用者が配送料を決めやすくするため、商品の大きさを自動的に推定する機能を提供している。自然言語処理技術を使って、利用者からのメールなどによる問い合わせを自動的に分類する技術も試験中だ。