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 あるメガバンクのIT担当者からこんな冗談を聞いたことがある。「我々を含め日本の大手金融機関のIT部門は毎年スカイツリーを建てている」。システムの保守運用費などITコストの巨額さを自嘲した表現だ。

 メガバンクや大手保険会社などは年間のIT予算が軒並み500億円を超える。東京スカイツリーの建設費は周辺整備の費用を除けば400億円と言われているから、大手金融機関はIT予算だけで毎年スカイツリーを建てられるというわけだ。

 このスカイツリーの例えをみずほ銀行が切り替えを進めてきた勘定系システム刷新プロジェクトに当てはめてみると、4000億円を超える開発費の巨額さがより鮮明になる。開発費だけで10本、あるいは11本のスカイツリーを建てられることになる。

 みずほ銀行は過去に2度の大規模システム障害を引き起こしており、新システムへの移行で失敗は許されないから、念には念を入れる必要がある。旧3行のシステムの機能を満たす大規模システムを一から作り直す取り組みであるため開発は困難を極め、開発費が膨らんだ面もある。開発工数で見ても推定20万人月に迫る空前絶後のプロジェクトとなった。

 開発費がここまで膨らんだのは、みずほ銀行にとって想定外だったに違いない。ただ、もっと想定外だった出来事がある。スマートフォンを使った決済など新たな金融関連サービスを提供するFinTechベンチャーが台頭し、従来の勘定系システムに比べ低コストでシステムを構築できるブロックチェーン技術などが登場したことだ。金融におけるIT投資のトレンドが大きく変わったのだ。

大規模システム開発は「絶後」

 その結果、「旧来型の勘定系システムの統合にそこまでお金をかける意味があったのか」といった声が上がるようになった。

 もちろん投資額の妥当性を軽々に判断できないが、もはや巨額投資に見合う収益を見通せないのは確かだ。実際、みずほフィナンシャルグループは、移行作業もまだ完了していない勘定系システムを含む固定資産の減損損失として、約5000億円を2019年3月期決算に計上する予定だ。

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