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本業として稼げるのか

 最大の問題は、そのための人手が足りないことである。こうした要望があることは開発者側も十分にわかっている。それでも対応が後手に回るのは、この仕事だけに専念できないからだ。

 富士通の開発の中心人物で、自身もウインドサーファーである横井愼也氏は、SE(システム・エンジニア)として他の業務に関わる中で作業を進めてきた。Red Dot Droneも、本格的に事業を立ち上げるのはこれからで、ウインドサーフィンに限らずさまざまなスポーツを対象にドローンを使った撮影システムを展開していく計画だ。

 人的資源の不足は、大会を運営するProfessional Windsurfers Association(PWA)側との連携にも影響した。昨年に引き続いて今大会でも富士通のシステムを利用することが、PWA側にうまく伝わっていなかったのである。交渉して使えるようにはなったものの、両者がきめ細かく連携することは難しい状況だった。

 例えば富士通のシステムには、選手の位置情報から順位を自動的に判定するなど、レースの運営に便利な機能がある。PWA側がこうした機能を全面的に採用していたら、レースの運営やアプリの中継がよりスムーズになったかもしれない注1)

注1)例えば、2回の予選レースがある男子のフォイル競技では、予選から決勝までの時間が短く、PWAの発表を待っていると、アプリの運用に必要な、決勝に出場する選手の登録が間に合わない可能性があった。このため富士通は選手の位置情報を利用して独自に順位を推定して、準備していた。ゴール線とゴールブイを結ぶ仮想ゴールラインを通った順に、システムに自動的に着順が入力される。ただし、GPS端末を付けていない選手がいると順位がずれるため、最後はPWA発表の結果と突き合わせて、人力で入力していた。実際、今年もGPS端末をつけずにレースに参加した選手が何人かいたが、順位がGPS端末の位置情報で決まるとなれば、こうしたことはなくなるとみられる。富士通は、将来的には順位の自動計測システムとして実用化を目指している。このほか撮影に使うドローンの運営でも、電池の容量の制約から、海上に飛ばしておく時間をなるべく短くしたいとの要望があり、PWA側と連携してレースの開始時間をきめ細かく知りたいとの声が上がっていた。

 開発者がウインドサーフィン関連の業務に専念できないのは、競技人口やファン層の規模が小さく、企業にお金が回りにくいマイナースポーツならではの宿命だ。どんなに観客を喜ばせる工夫を凝らしても、そこから大きな利益を得ることは、当面難しい。営利企業としては、大きな力を注ぎにくいわけだ。

 結果として新たなファン層の開拓が滞り、人気の低迷が長引いてしまいかねない。競技の開催が天候に振り回され、風向きと選手の位置関係が重要など、観戦のツボがわかりにくいウインドサーフィンは、さらに分が悪い。