2018年はアジアのクラブNo.1を決める「AFCチャンピオンズリーグ(ACL)」で初優勝、Jリーグでも最多の優勝回数8回を誇る鹿島アントラーズ。この名門は今、世界と戦えるクラブを目指し、デジタル戦略を強化やスマートスタジアム化を推進している。
日経BPが主催したスポーツビジネスイベント「SPORTS Tech & Biz Conference」(2019年3月20日開催)では、鹿島アントラーズFC 事業部マーケティンググループ グループ長の春日洋平氏が、デジタル活用や未来への展望を講演で紹介した。
バイエルン・ミュンヘンが開幕7週間前に完売
鹿島アントラーズのマーケティンググループには、「コンシューマ」「セールス」「広報」と大きく3つの軸があるという。コンシューマは“to C”で、チケットやファンクラブ、マーチャンダイズなどを行っている。セールスはスポンサーセールスやスポンサー協業、新規セールスなどを担う。
広報は公式メディアの運営やプロパティの管理などを担っている。鹿島アントラーズではメディアチームを持っていて、インハウスで公式サイトやSNS、印刷媒体などを制作しているのが特徴だ。
Jリーグクラブで唯一、ホームゲームの中継制作をクラブ内で行っている。また、戦略チームもあり、さまざまなスペシャリストたちが新規事業の設計やグローバル戦略、ブランディングなどを展開している。
春日氏はマーケティンググループの今後の目標をこう語る。「やるべきことは、セールスという概念にとらわれず、クラブの売り上げを高めることです。将来的には販促活動を不要にするところまでクラブの価値を高め、“売る”という行為から“売れる”にシフトしていきたいという、強い思いがあります」。
「フットボールにおいて、それはどういうことを意味するのか。例えば、2018年、ドイツ・ブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘンは開幕7週間前にアウェイの試合も含め、全てのチケットを完売しています。このため、彼らはチケットの販促活動を年間通じてする必要がなくなった。一方で我々は、この部分に非常に多くのリソースを割かれています。彼らはそれが不要な分、スポンサーとの向き合い方やホスピタリティーの在り方など、より重要な部分にリソースを割けるのです」(同)