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 メルカリはJ1リーグの名門、鹿島アントラーズ・エフ・シーの経営権を取得し、スポーツビジネスに本格参入する。

 同社と日本製鉄は2019年7月30日、日本製鉄とその子会社が保有する鹿島アントラーズの発行済み株式72.5%のうち、61.6%をメルカリに譲渡する株式譲渡契約を締結したと発表した。譲渡金額は16億円。現在、公正取引委員会の審査中としている。

2019年7月30日に東京都内で開催された記者会見の様子。左から日本製鉄 執行役員の津加 宏氏、アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長の庄野 洋氏、メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏(写真:日経 xTECH)
2019年7月30日に東京都内で開催された記者会見の様子。左から日本製鉄 執行役員の津加 宏氏、アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長の庄野 洋氏、メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏(写真:日経 xTECH)
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 日本製鉄は譲渡後も第2となる11%を保有する。そのほかは、ホームタウンである鹿行地域(鹿嶋市、潮来市、行方市など)の地方自治体が10.8%、その他企業が16.6%を持つ。メルカリ、鹿島アントラーズ、地方自治体が三位一体となって、スポーツビジネスの進化を目指す。

 鹿島アントラーズは1993年のJリーグ発足以降、リーグ優勝8回、AFCチャンピオンズリーグ優勝1回を含む20冠を達成したリーグ屈指のクラブである。スポーツビジネスの観点でも、スマートスタジアムへの取り組みや、健康・医療事業の展開、「アントラーズホームタウンDMO(Destination Management Organization)」の設立など、Jリーグクラブの先端を走る数々の取り組みを実践している。

 その視線の先にあるのは「世界で戦えるビッグクラブ」。2019年1月期の売上高は前期比約40%増の73億3000万円と好調だが、世界で戦うために売上高100億円規模への成長を目指している。

 メルカリは、このように世界を目指す鹿島アントラーズの姿勢に共感し、2017年にクラブオフィシャルスポンサー契約を締結した。さらに、自社が持つテクノロジーと事業運営ノウハウを提供することによって、鹿島アントラーズの経営基盤強化につなげられると判断したという。

成長のカギはテクノロジー

 今回の契約が成立後に、同クラブの代表に就任予定のメルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏は、経営参画の狙いとして「顧客層の拡大」「ブランド力の向上」「ビジネス機会の創出」を挙げた。

 メルカリの顧客層は現在、20~30代の女性が中心だが、男性や40代以上の層にリーチするのにサッカーは適したコンテンツであるという。また、起業して6年半と若いメルカリがブランド力を高めるのに、知名度が高く伝統もある鹿島アントラーズは格好のパートナーだった。

 そして新たなビジネス機会は、メルカリが持つテクノロジーを導入することで創出できるとした。同社は主力のフリマアプリ「メルカリ」のほかに、スマートフォン(スマホ)決済サービスの「メルペイ」を展開するが、「スタジアムでのグッズや飲食販売のキャッシュレス化、チケットのペーパーレス化、さらにVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を使った観戦体験など、スポーツやエンタメを支えるテクノロジーは今後発展の余地が大きい。アントラーズのEコマース事業は毎年20%成長しているが、さらに伸ばせる可能性がある」(小泉氏)とした。

 鹿島アントラーズはNTTドコモと2019シーズンのクラブオフィシャルスポンサー契約を締結し、茨城県立カシマサッカースタジアムの「スマートスタジアム化」や「ホームタウン・フレンドリータウン活性化事業」などを推進している。「NTTドコモは5G時代を見据えた地域のデジタル化に取り組んでいる。メルカリとは得意とする領域が異なるので、両社でシナジーを創出できるのではないか」と、アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長の庄野 洋氏は期待をかける