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 開幕まで200日を切った東京オリンピック・パラリンピック(東京2020大会)。オリンピック出場権を懸けたアスリートの戦いの模様や、競技場の竣工状況の様子などが日々メディアで取り上げられ、にわかに活気づき始めている。そんな中、従来の視点とは違った角度からオリンピック・パラリンピックを盛り上げようとしている人物がいる。Jリーグ・川崎フロンターレで数々の大ヒット企画を手掛け、現在は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に出向している天野春果氏だ。組織委員会でイノベーション推進室 エンゲージメント企画担当部長に就任した同氏は、この3年弱の間に、「東京2020算数ドリル」など複数の企画を実行し、大会の注目度アップに大きく貢献している。

 そんな天野氏が組織委員会の中で手掛けている最大規模の企画が「G-SATELLITE(ジーサテライト)1」である。国民的人気を誇るテレビアニメ「機動戦士ガンダム」に登場するガンダムとシャアザクのプラモデル(ガンプラ)を搭載した超小型の人工衛星を、ISS(国際宇宙ステーション)から宇宙空間に放出し、地球周回軌道を飛行しながら東京2020大会へ応援メッセージを発信し続けるというものだ。なぜ天野氏は、このような”前代未聞”の企画を着想し、どのように実現にこぎ着けたのか。(取材日:2019年12月4日)(聞き手:上野直彦=スポーツライター、久我智也=ライター)

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 イノベーション推進室 エンゲージメント企画担当部長の天野春果氏。Jリーグ・川崎フロンターレ時代にも数々の大ヒット企画を手掛けてきた
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 イノベーション推進室 エンゲージメント企画担当部長の天野春果氏。Jリーグ・川崎フロンターレ時代にも数々の大ヒット企画を手掛けてきた
(写真:久我 智也)
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「史上初の取り組みをしたい」

「G-SATELLITE」は、オリンピック・パラリンピックの応援のためにゼロから人工衛星を開発して宇宙に飛ばすという前代未聞かつ壮大な企画です。この企画を実行する狙いを教えてください。

天野 東京2020大会は世界が大注目する国家的な事業ですから、日本全体で盛り上げていかなくてはなりません。そのためには、過去の大会ではやっていない取り組みをし、さらに開催地である“日本らしさ”を採り入れた企画が必要でした。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東京大学とコラボした、「宇宙から東京2020エール!」企画第2弾「G-SATELLITE 宇宙へ」のイメージカット
宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東京大学とコラボした、「宇宙から東京2020エール!」企画第2弾「G-SATELLITE 宇宙へ」のイメージカット
((c)Tokyo 2020 (c)創通・サンライズ)
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 ただし、応援企画に豊富な予算や人員を割けるわけではないので、過去に所属した川崎フロンターレで培ったものをフル活用しようということで思い至ったのが、「宇宙」を舞台とした企画です。フロンターレに在籍していた2016年、ISSと、フロンターレのホームスタジアムである等々力陸上競技場を衛星回線でつなぎ、当時ISSに滞在していた大西卓哉宇宙飛行士とフロンターレの選手や川崎市内の小学生たちで交信する企画を行いました。そのときの経験や人脈を生かせると思ったのです。

 「オリパラ×宇宙」という切り口でまず実施したのが、人気漫画『宇宙兄弟』とコラボして、ISSの無重量状態でパラパラ漫画はめくれるのか、という企画でした。ただ、ISSに滞在している宇宙飛行士がオリンピック・パラリンピックに応援メッセージを送る取り組みは過去にも行われています。私は史上初の試みをしたいと思っていたので、どうにか宇宙飛行士が船外に出る企画ができないかと考えるようになりました。

船外活動を実現するのは非常にハードルが高そうですね。

天野 信じられないくらいハードルが高かったです(笑)。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の方に相談してみたところ、「実現するにはトランプ大統領の許可が必要です」と、真顔で言われました。日本で行われるオリンピックに、日本人宇宙飛行士の協力を得ようとしても、そこは米航空宇宙局(NASA)のトップ、つまり米国のトップであるトランプ大統領の承認が必要になるんです。

 では、ロシアならどうだろうと思って調べてみたところ、ロシアは宇宙を舞台としたビジネスをしているので、お金を払えばできるかもしれないということだったのですが、船外で活動してもらうには2億円相当がかかると判明し、宇宙飛行士を船外に出す考えはあきらめました。

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