新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的な感染症の流行)は、世界経済に“リーマン・ショック”を超える打撃を与え、多くの産業に変革を強いている。中でもスポーツビジネスは、世界的に大会の中止・延期がされるなど大きな影響を受けている分野の1つだ。では、これからの「ウィズコロナ」「アフターコロナ」の“コロナ時代”に、スポーツビジネスにはどのような環境変化が求められるのか。そしてテクノロジーはどのような貢献ができるのか。米国サンフランシスコと東京を拠点に、シード/アーリーステージのスタートアップに投資するスクラム・ベンチャーズ アソシエイトの黒田健介氏に3回にわたって解説してもらう。
2020年4月、新型コロナによるロックダウン(都市封鎖)の環境下で、米プロバスケットボールNBAで活躍する八村塁選手ら、NBAの選手16人がバスケットボールの試合を行った。と言っても現実の試合ではなく、プレイステーション4などに対応したゲームソフト「NBA 2K20」のバーチャル空間で行われたトーナメントである。
八村選手は自身が所属するワシントン・ウィザーズではなく、ロサンゼルス・レイカーズや同クリッパーズを選択し、準々決勝まで駒を進め、バーチャルなプレイでも世界中のファンを楽しませた。
このように新型コロナの影響でプロスポーツのリーグ戦や大会、イベントのほとんどが中止や延期に追い込まれる中、競技団体やアスリートはさまざまな方法でファンをエンゲージする方法を模索している。
過去数年間、「スポーツテック」は急速に注目度を高めていた。米Crunchbaseによると、2013年に5億ドルに満たなかった同領域への投資額は、2018年には25億ドルと急成長を遂げている。
しかし、今足元で起こっている環境変化は、過去5年で起こったスポーツテック領域の成長とは全く異質なものである。これまでのじわりじわりと侵食していくようなデジタルシフトではなく、テクノロジーを用いてこの急激な環境変化に適応 “していかなければならない” という必然性を伴っている。