サッカー日本代表を2度、ワールドカップ出場に導いた名監督――。それがサッカー界における岡田武史氏のイメージだった。2010年に代表監督を退任すると、日本サッカー協会の理事や中国の杭州緑城足球倶楽部(現・浙江緑城足球倶楽部)監督などを歴任。そして14年11月、当時、四国サッカーリーグに所属していた、FC今治の運営会社に出資してクラブオーナーとなる。今治の会長になったばかりのころは、記者から「岡田監督」と呼ばれることも少なくなかった。しかし18年には指導者ライセンスも返上。その間、現場に関与する機会を極力減らしながら、クラブ代表としての活動に比重を置くようになり、今ではすっかり「ビジネスの岡田さん」というイメージが定着した。そしてFC今治も、5シーズンをかけて四国リーグからJFLへとステップアップし、いよいよ20年からJ3の舞台で戦うこととなった。
そんな晴れがましい新シーズンを、新型コロナウイルスの感染拡大が襲う。3月8日に予定されていた開幕戦は延期。そしてコロナ禍による中断期間は4カ月におよび、当然ながらFC今治のクラブ経営を脅かすことになった。日本中が緊急事態宣言で騒然とする中、岡田氏はどのようなことを考えていたのか。そしてウィズコロナ時代のクラブ経営について、どんなビジョンを持っているのだろうか。今回のインタビューでは、前後編の2回にわたり「これからのスポーツビジネスの考え方」について、岡田会長に聞いた。(取材日:2020年8月28日)