近年、地域密着型の総合型地域スポーツクラブとして、特定のスポーツだけでなく複数の競技を展開するプロスポーツクラブが増えている。特に顕著なのがJリーグクラブだ。
いち早くその動きに取り組んだのは湘南ベルマーレで、2002年に「特定非営利活動法人湘南ベルマーレスポーツクラブ」を設立し、ビーチバレーやフットサル、トライアスロンなどの競技に進出している。また東京ヴェルディも2018年に「一般社団法人 東京ヴェルディクラブ」を設立し、ビーチサッカーやeスポーツといった競技、さらにはスポーツを通じてビジネス人材を育成するスクールも展開している。その他にも複数のクラブが総合型地域スポーツクラブを設立しているが、これには競技間に横串を通して刺してファンの回遊をうながしたり、スポーツを通じたコミュニティーを形成したりして地域活性化を促進する効果がある。
今後、少子高齢化による人口減少が進む日本にとって、このようにスポーツを通じて人々の社会的・身体的健康を促進する動きは、地域社会のためにはもちろん、スポーツクラブが継続的な組織として在り続ける上でも重要な意味を持っていくことになる。
この流れに新たに加わったクラブがある。2019年のJリーグチャンピオンである横浜F・マリノスだ。2020年11月25日、同クラブを運営する横浜マリノスは「一般社団法人F・マリノススポーツクラブ」の設立を発表した。具体的には、(1)スポーツによるサステナブルな地域社会に向けた取り組み、(2)世界で活躍する選手の育成強化、という2点をゴールに掲げ、2021年2月から事業を開始する。このゴールを達成するための手法が、「課題解決型スポーツビジネスモデル」だ。代表理事を務める宮本功氏は次のように説明する。
「F・マリノススポーツクラブは、チケットや広告を売って生業にしていく組織ではありません。我々が持つブランドやアセット、パートナーや自治体、地域の方々と共に課題を解決していくことで、持続可能なモデルを作っていくことを目指していきます」(宮本氏)
「持続可能なモデル」を形成するためにも、まずは自分たちの基盤であるスポーツビジネスの成長が欠かせないとも話した。
「コロナ禍のような苦難の中で、我々のようなスポーツクラブがどうやって持続可能な存在になっていくのかが大きな課題です。他のビジネスに比べると、スポーツビジネスはまだまだ未成熟な面がありますし、特に日本のスポーツビジネスはこれから世界レベルに持っていかなくてはなりません。ビジネスとして成立させるには、その点をしっかりと考えていかなくてはならないと感じています」(同)