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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はスポーツ業界にかつてないほどの暗い影を落としたが、その中でも光明を見いだした領域がある。Doスポーツ、中でもランニングやトレイルラン、登山といったアウトドアスポーツだ。他と同様、大会やイベントは中止・延期に追い込まれたが、「バーチャルレース」のような新しいスポーツの在り方が生まれ、今後の成長が期待されている。2021年1月30日に開催された「スポーツアナリティクスジャパン2021」では、実際にバーチャルレースを開催した企業や、そこで使われるプラットフォームの提供企業の関係者などが登壇。Doスポーツやアウトドアスポーツ、バーチャルレースのこれからについて語り合った。

緊急事態宣言下で運動頻度が増加

 20年はCOVID-19の影響によって、カテゴリーを問わず多くのスポーツ大会やイベント、リーグ戦が中止に追い込まれた。その一方、同年4月から5月にかけて発令された緊急事態宣言下では、健康の維持やストレス解消のために運動が奨励されたこともあってスポーツをする人は増加した。ランニングやサイクリングなどの運動をGPS(全地球測位システム)でトラッキングし、その情報を記録・共有できるアスリート向けSNS「Strava(ストラバ)」を提供する三島英里氏(Senior Country Manager, Japan)は、当時のストラバの利用状況について次のように振り返った。

 「ストラバの平均アクティビティー件数は全世界で2150万件/週ほどでしたが、COVID-19が世界的に広まり始めた3月中旬ごろから週間の平均アクティビティー件数が増加していき、5月には3000万件を超える週も出たほどです」(三島氏)

このセッションの登壇者たち。左上から時計回りに、SAJ実行委員会の西原雄一氏、三島英里氏(Strava Senior Country Manager, Japan)、宮田誠氏(ユーフォリア代表取締役 Co-CEO)、大森英一郎氏(ラントリップ代表取締役)、春山慶彦氏(ヤマップ 代表取締役)
このセッションの登壇者たち。左上から時計回りに、SAJ実行委員会の西原雄一氏、三島英里氏(Strava Senior Country Manager, Japan)、宮田誠氏(ユーフォリア代表取締役 Co-CEO)、大森英一郎氏(ラントリップ代表取締役)、春山慶彦氏(ヤマップ 代表取締役)
(図:日本スポーツアナリスト協会)
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 ランニングに関する情報発信やアプリ開発、EC(電子商取引)事業などを手掛ける大森英一郎氏(ラントリップ代表取締役)も同様の変化を口にした。

 「COVID-19の影響で在宅ワークをすることになった人も多いと思いますが、我々が提供するSNS会員の方に向けて『在宅ワーク前後で運動頻度の変化』をアンケートしたところ、32%の方が増加したと答えました。在宅ワークをきっかけに運動し始めた方もいますが、もともと高頻度でランニングをしていた方が、時間ができたことでさらに運動に時間を費やす傾向も見て取れました」(大森氏)

 単純に運動頻度が増加しただけではなく、人々は「工夫」をしながら運動をするようにもなったという。

 「サイクリングではエベレストの高さと同じ距離(8848m)だけ坂を上り下りする『エベレスティング』という楽しみ方があるのですが、コロナ禍でエベレスティングを楽しむ人が増えたことがストラバのデータから分かっています。多くの大会が中止されましたし、誰かと一緒に運動するのも難しい状況でしたから、モチベーションを高く維持するためには、いつもとは違う形でアクティビティーをしようと考えた方が多かったのだと思います」(三島氏)

 エベレスティングの他にも、特定のコースでタイムを競う「ファステスト・ノウン・タイム(Fastest Known Time:FKT)」や、1人でマラソンをする「ソロマラソン」、ランニングルートをGPSで記録してマップ上に絵を描く「GPSアート」などを楽しむ人も増えたという。

20年の緊急事態宣言下におけるストラバの利用動向の変化。3月中旬ごろからアクティビティーが増え始め、5月上旬~中旬ごろにピークを迎えたことが分かる
20年の緊急事態宣言下におけるストラバの利用動向の変化。3月中旬ごろからアクティビティーが増え始め、5月上旬~中旬ごろにピークを迎えたことが分かる
(図:日本スポーツアナリスト協会)
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