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 日本初のプロ卓球リーグとして2018年にスタートした「Tリーグ」。日本だけではなく海外の代表クラスの選手が多数集結し、世界でもトップレベルのリーグとして耳目を集めている。その成長を陰ながら支えているのが、リーグのマーケティング業務などを手がけるTマーケティング、そして19年7月から同社の代表取締役社長に就任した日下部大次郎氏だ。日本興業銀行などで働いた後、日本プロバスケットボールリーグ(bjリーグ)や東京アパッチ、ヤマハ発動機ラグビー部など、スポーツ畑を歩んできた日下部氏は、Tリーグの未来をどのように見据えているのだろうか。ビジョンを聞いた。(聞き手:上野直彦=スポーツジャーナリスト、久我智也)(取材日:2021年3月5日)

最大規模の愛好者がいるスポーツ

日下部さんがTマーケティングの代表取締役社長に就任した経緯を教えてください。

日下部 私はスポーツ業界に転身した後、早稲田大学スポーツ科学学術院に通っていました。Tリーグの初代チェアマンである松下浩二さん(現Tリーグアンバサダー)も期は異なるものの同じゼミだったこともあり、OB会などを通じて親交を深めていました。その関係から、松下さんがTリーグを立ち上げることになったときに相談を受けていました。私はかつて日本初のプロバスケットボールリーグであるbjリーグの設立に携わったので、その経験から「プロだけを集めるのではなく、プロアマ混合のリーグでも十分にやっていけるはず」といったアドバイスは送っていました。

Tマーケティング代表取締役社長の日下部大次郎氏
Tマーケティング代表取締役社長の日下部大次郎氏
日本興業銀行、みずほコーポレート銀行などを経て2005年に日本プロバスケットボールリーグ(bjリーグ)の経営企画室ディレクターに就任。その後同リーグの東京アパッチ代表取締役や一般財団法人SS11 事務局長、ヤマハ発動機ラグビー部アドバイザー、T.T彩たまのスーパーバイザーなどを経て、2019年7月より現職(写真:Tマーケティング)
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 その後、Tリーグ加盟チームのT.T彩たまのスーパーバイザーとしてチーム運営に携わっていたのですが、2年目のシーズンが始まる前、Tリーグと日本卓球協会が50%ずつ出資して設立したTマーケティングの社長就任のお話をいただき、受諾することになりました。

それだけTリーグや卓球に可能性を感じていたからだと思いますが、このリーグや競技にはどのようなポテンシャルがあると見ていたのでしょうか。

日下部 卓球は裾野が広いスポーツで、正式に日本卓球協会に登録している競技人口は36万人ほどですが、いわゆる温泉卓球など年に1回程度プレーする人も含めると国内には800万人もの愛好者がいると言われています。日本でこの数字より上に来るのはウォーキングやランニング、スイミング、登山などで、野球やサッカーを含めた対戦型スポーツの中では卓球が最上位です。

 グローバルでも、中国という巨大マーケットをはじめとして多くの国で人気があります。その中において、男子で言えば張本智和選手や水谷隼選手、丹羽孝希選手、女子で言えば伊藤美誠選手や石川佳純選手、平野美宇選手など、多くの日本人プレーヤーが世界のトップランカーとして戦い、過去にオリンピックや世界選手権でメダルを獲得しています。こうした選手たちは一般的な知名度も非常に高いため、国民にもメディアにも応援してもらいやすい環境があります。マーケティング的なポジションとして非常にいい位置にいると言えます。

卓球市場には国内で800万人の潜在顧客がいて、世界では競技人口が3億人存在するとみられている。プレー人口の幅も広いため、スポーツの中でも高いポテンシャルを持っている
卓球市場には国内で800万人の潜在顧客がいて、世界では競技人口が3億人存在するとみられている。プレー人口の幅も広いため、スポーツの中でも高いポテンシャルを持っている
(図:Tマーケティング)
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