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 コロナ禍で大きな影響を受けた米国のプロスポーツリーグが、5G(第5世代移動通信システム)や拡張現実(AR)、仮想現実(VR)といった技術への取り組みを加速させている。

 米国では、新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年3月中旬にほぼすべてのスポーツ興行が停止に追い込まれた。その後、夏頃から再開されるようになったが、感染対策のために無観客や入場人数を厳しく制限しての試合開催が続いている。ビジネスを継続するため、会場に来られないファンにこれまでより試合を身近に感じてもらい、さらにはスポンサーのアクティベーションとなる手段として注目されているのがこれらの技術なのだ。

5Gで自由視点映像を配信

 プロバスケットボールのNBAは3月にシーズンを中断した後、選手とスタッフをフロリダ州オーランドのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのホテルに完全隔離し、敷地内のアリーナでのみ無観客で試合を行う「バブル」と呼ばれる方式で、10月にシーズンを終えた。そのプレーオフのプレゲーム番組中に放送されたのが「ホロ・インタビュー」だ。

 これはインタビューのスポンサーである米携帯電話大手AT&Tの5G技術を利用して制作された。一見、選手の目の前にリポーターが座ってインタビューをしているような動画になっている。しかし、実際には選手がフロリダのホテルにいるのに対し、インタビュアーは遠く離れたジョージア州アトランタとカリフォルニア州ロサンゼルスにいたのだ。

5Gを使った「ホロ・インタビュー」の様子
5Gを使った「ホロ・インタビュー」の様子
(図:AT&TのWebページより)
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 「超低遅延」という5Gの特性を生かすことで、リアルタイムにスムーズなインタビューを実施できた。担当したAT&Tモビリティのデビッド・クリストファー上級副社長は「5Gによるホロ・インタビューで我々は物理的な距離が離れていても選手とつながり、交流できます。これは将来的に5G技術を利用してファンを試合に近づける新たな方法を示すものです」とさらなる発展を示唆した。

 開幕が遅れた後、レギュラーシーズンの試合数を減らし、やはり10月にシーズンを終えたプロ野球のMLBでも、5Gへの取り組みが行われた。終盤のナショナルリーグ優勝決定シリーズと、優勝決定戦のワールドシリーズをテレビ放映したFoxスポーツが、電子機器大手の韓国サムスン電子、自由視点映像技術を提供する米4DReplayと提携してマルチアングル映像配信を実施した。

 これはFoxスポーツアプリの新機能として提供されたもので、5G対応のアンドロイド端末のユーザーは、5つのカメラアングルから好きな角度を選んで見たり、同時視聴したり、自由にズームインができた。さらにフィールドを取り囲む90台のカメラから生成された視点を360度移動できる自由視点映像も提供された。