コロナ禍による東京五輪の開催延期などで、日本国内でも米国のメディア企業NBCユニバーサル(NBCU)が巨額の放映権料を支払い、開催時期や競技スケジュールの決定などで大きな権力を握っていることが広く知られるようになった。実際のところ、同社は2021年から32年までの放映権に対して、77億5000万ドルもの契約を国際オリンピック委員会(IOC)と結んでおり、一方で東京五輪の米国内広告で既に12億5000万ドルを売り上げたと発表している。
五輪中継のエグゼクティブプロデューサー、モリー・ソロモン氏は「壊滅的な1年を経て、この夏、東京で世界が再び一つになります。私たちは、歴史上のあらゆるスポーツイベントの中で、最も包括的で分かりやすい報道を行うつもりです」とコメントした。同社は合計7000時間にもおよぶ放送・配信を行うことが発表されている。
では実際、NBCUはこれほどの規模の中継をどのように実現しようとしているのか。日本では地上波のNBCのみが注目されることが多いが、実際はNBCUグループ全体での取り組みとなっている。地上波ではNBCのほかにスペイン語放送のテレムンド・デポルトスが、ケーブルチャンネルではUSAネットワーク、CNBC、NBCSN、オリンピックチャンネル:チームUSA、ゴルフチャンネル、Universoという6つのネットワークが中継を担当する。さらに傘下の動画配信サービス「ピーコック」を中心に複数のサービスでストリーミングも実施される。
もちろん、最も力を入れるのはNBCだ。会期中の全17日間、米国には東部時間や太平洋時間など4つのタイムゾーンがあるが、その全てで視聴者数が多い夜のプライムタイムに生放送が計250時間行われる予定だ。これが、米国で人気の高い水泳やバスケットボールの決勝が日本時間の正午ごろに開催される要因となっている。
また7月23日の開会式は日本の午後8時開始となっているが、これをNBCは生中継する予定だ。NBCが開会式を米国の朝に生中継するのは実は史上初となる。日本人の感覚では五輪の開会式の生中継は当たり前と思うが、NBCはやはり注目度の高い開会式はプライムタイムに、しかも他国の入場行進などをカットした一般視聴者が見やすい編集をした録画放送をこれまでは行ってきた。
もちろん、これに対してスポーツファンの不満は大きく、海外のライブストリーミングなど、どうやったら開会式をライブで見られるかという情報がネットなどでやりとりされるのが大会ごとの恒例行事になっていた。さすがに今回はNBCも方針転換した形だ。
6つのケーブルチャンネルでは、計1300時間以上の五輪番組が放映予定となっている。娯楽専門チャンネルであるUSAネットワークは7月21日の女子サッカー、米国対スウェーデンに始まり、ほぼ毎日計388.5時間を放映する。オリンピックチャンネル:チームUSAも計242時間、独自番組を提供するということだ。