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 プロテニスの大坂なおみ選手が「うつ」症状に苦しんでいることを告白したり、東京五輪で米女子体操のスターであるシモーン・バイルズ選手が同様の症状で多くの競技を棄権したりしたことで、一般にも注目されるようになったアスリートのメンタルヘルス問題。近年、米スポーツ界では五輪で通算23個の金メダルを獲得した水泳のマイケル・フェルプスやスキーのリンゼイ・ボン、プロバスケットボールNBAのデマー・デローザン、ケビン・ラブなど不安やうつ、薬物乱用、自殺願望など、自身のメンタルヘルスを打ち明ける選手が続出し、協会やリーグ、チームなどが対策に当たるようになっている。

 例えば米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は心理学者ジェシカ・バートリー氏を責任者とし、フルタイムのメンタルヘルス担当者を4人雇用している。バートリー氏は「今こそ、このようなサービスを拡大すべき時です。社会がメンタルヘルスについて語るようになってきました」と指摘している。

 さらに東京五輪では初めて4人の担当者が米国選手団、チームUSAに帯同し、東京に常駐して参加者全員を対象としたメンタルヘルスサービスにあたった。バートリー氏によれば、大会期間中、サポートの依頼が毎日約10件あったということだ。そのほとんどは直接選手からではなく「選手の周囲の人からの情報提供で、状況を察知した」ものだったという。内容は、新型コロナウイルス感染症による行動規制での隔離中の葛藤、母国からの予期せぬ知らせ、大会で期待通りのパフォーマンスができなかったことなど、多岐にわたったとしている。深刻な問題の可能性を示すものもあり、そうしたものに対してはすぐに電話をかけて精神状態を尋ね、メンタルヘルス面での追加サポートが必要かどうかを判断するなどをしたという。