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 米国時間の2021年10月22日、ロックバンド、コールドプレイのライブを皮切りに、米ワシントン州シアトルの「クライメット・プレッジ・アリーナ」がオープンした。翌23日にはプロアイスホッケーNHLのシアトル・クラーケンが初のホームゲームを行った。22年春には女子プロバスケットボールWNBAシアトル・ストームも使用を開始する予定だ。

「クライメット・プレッジ・アリーナ」のWebページ。環境対策を強くアピールしている
「クライメット・プレッジ・アリーナ」のWebページ。環境対策を強くアピールしている
(図:クライメット・プレッジ・アリーナ)
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 同アリーナは元々1962年に完成し、「キー・アリーナ」の名で親しまれてきた。しかし老朽化が進んだために、18年から特徴的な屋根を除くほとんどの部分に手を入れる全面的な改修が行われてきたのである。その改修費は当初8億ドルと試算されていたが、工事とともに膨れ上がり、12億ドルに達した。

 新たな名称での再オープンとなったが、これは命名権によって付けられたものだ。ただしクライメット・プレッジとは社名やブランド名ではない。総額3~4億ドルを支払う契約で命名権を取得したのはIT大手で地元シアトルに本社を置く、アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)である。クライメット・プレッジ(Climate Pledge)とは直訳すると「気候誓約」。これはアマゾンと環境活動グループのグローバルオプティミズムが40年までにCO2(二酸化炭素)排出量をゼロにすることを目標とした温暖化対策キャンペーンの名称なのだ。

 GAFA(Google、Amazon.com、Facebook(現Meta)、Apple)の一角をなし、世界的に知られたアマゾンとしてはいまさらネーミングライツでアピールする必要はない。それならば気候変動対策に取り組む姿勢をアピールすることで企業イメージの向上に努めた方が良いと判断したのだろう。

再生可能エネルギーでオール電化

 そんな名称なだけに1万8100人収容のアリーナは持続可能性、サステナビリティへの取り組みに力が入れられている。まず掲げられているのがゼロカーボン(CO2排出ゼロ)だ。建築環境の持続可能性認定プログラムを運営する国際リビング未来研究所が認定するゼロカーボン・アリーナを目指すとしている。

 そのためにオール電化となり、その電力はアリーナに設置された太陽光パネルと敷地外からの再生可能エネルギーを使った発電による電力ですべてまかなわれる。さらにCO2排出量は毎年計測され、温室効果ガスの排出削減量証明である炭素クレジットを購入することで輸送などアリーナ単体では対処できない排出を相殺するということだ。

 また車ではなく、公共交通機関での来場が推奨されており、試合の入場電子チケットを見せればダウンタウンと結ぶモノレールが無料乗車できる仕組みも導入されている。

 使い捨てプラスチック製品を廃止する意向も宣言されており、24年までに全廃を目指す。施設内にごみ箱は置かれず、リサイクルボックスと堆肥を作る生ごみ処理器のみが設置される徹底ぶりだ。

 節水にも務めており、屋根を使って雨水を約5万6800リットルためることができ、これを再生してアイスリンクの氷の生成に使用している。さらにアリーナ全体に飲用ウォーターボトルの充填ステーションが設けられているほか、トイレやシャワーも節水型が導入されている。