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全日本空輸(ANA)グループが全ての職場の全ての業務でデジタル技術の活用に乗り出した。1000億円を投じてIT基盤も刷新した。将来を見据え、航空産業の枠組みを打ち破る先行投資も進める。国内最大手の航空グループにおけるデジタル戦略を追った。

ANAグループは客室や空港など現場の各部門でデジタルトランスフォーメーション(DX)を一斉に進めている。特筆すべきは「PoC(概念実証)倒れ」を防ぐ、オペレーション改革とセットの進め方だ。水面下で広がる人手不足に先んじることができるか。

 2019年3月21日、小雨の成田空港。520席を有する超大型機「A380」が難なく着陸した。

 ANAホールディングス(HD)が前日に欧州エアバスから受領したばかりの1号機が製造工場のあるフランス・トゥールーズから12時間かけて納入(回航)された瞬間だ。現地での受領式からA380に乗って帰国したANAHDの片野坂真哉社長は「成田付近は風が少しあったが、大型機だけあって揺れずに安定して着陸できた」と快適さをアピールした。

乗務員同士がワイヤレス会話

 記念すべきこの回航フライトには、実はもう一つの重大なミッションがあった。客室サービスの質を高めるDXの実証実験の舞台になっていたのだ。

A380は客室が広いうえ2層に分かれているため、最初の試験導入対象とした(写真:的野 弘路)
A380は客室が広いうえ2層に分かれているため、最初の試験導入対象とした(写真:的野 弘路)
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 実質的な本番投入の日は近い。A380をホノルル線に投入するのは約1カ月後の2019年5月24日だ。この日以降、A380に乗る延べ約2000人の客室乗務員が大規模試験導入する。

 「この銘柄のドリンクを1つお願いします」「2階のお客さまは全て降りました」――。総2階建てで縦にも横にも広いA380には1便当たり20人と従来のハワイ線の2.2倍もの客室乗務員が乗る。客室乗務員をよく見ると、みな片耳にイヤホンマイクをしている。

客室乗務員は片耳にBluetoothイヤホンマイクを装着する(写真提供:全日本空輸)
客室乗務員は片耳にBluetoothイヤホンマイクを装着する(写真提供:全日本空輸)
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 これで機内のどこにいても連絡を取り合える。従来機は機内の数カ所に据え付けたインターホンでやりとりする必要があり、機内食のサービス時などは緊密なコミュニケーションを取りにくかった。

 ドリンクサービスでは乗客からカートに載せていない飲み物を依頼されることがしばしばある。以前は客室乗務員がいったんギャレー(厨房)に戻り、ギャレー担当の客室乗務員に依頼していたが、イヤホンマイクで伝達できればその都度戻る必要がなくなる。

 A380が就航するホノルル線は深夜便だ。「お客さまに少しでも長く休んでもらうためにも、客室乗務員同士が連係してドリンクや機内食のサービスを早く終わらせることが必要だ」。客室乗務員でもあり、イヤホンマイク導入に携わったANAの古谷あずみオペレーションサポートセンター品質企画部マネジャーは強調する。

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