フィンテック(FinTech)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語だが、日本ではまだ金融機関主体の開発が続いており、特許出願件数も少ない。一方、海外に目を転じると海外勢の特許出願はハイスピードで増加しており、アジア勢、特に中国企業の台頭が目覚ましい。ただ各国の事情が異なり、中国企業が世界シェアを押さえている状況ではない。
フィンテックは構造的に非金融企業が有利な分野だ。コスト面での優位性に加え、新しい金融サービスをICT( Information and Communication Technology:情報通信技術)と結び付けることで、特許として認められる可能性が高くなった。金融機関や金融機関の取引先では、斬新なフィンテック技術の開発は難しいであろう。
ユニークな技術を開発した新興企業が市場シェアを一気に獲得する余地が残されている分野と言える。
中国企業が特許出願件数を牽引
[1]日本の金融関連特許出願:未だに金融機関主体の開発続く
国内の金融関連特許出願状況は図1の通り緩やかな増加を見せているが、その件数は少ない。
図2は出願上位20位(過去10年)である。上位は金融機関か金融機関にシステムを納入している企業が多く、非金融と呼べるのは少ない。
[2]海外の金融関連特許出願
海外の金融関連特許出願を見ると、日本に比べて件数が多くかつ増加が急である(図3)。
出願件数を牽引するのは、アジア勢、とりわけ中国企業だ(図4)。トップの平安科技(Ping An)の出願件数は1社グループで日本の総数を上回る。また中国アリババ(阿里巴巴)や中国4大銀行などの出願件数も増加を続けている。一方で、この分野で先行した米国企業の出願件数は減少に転じている。
中国においては、スマートフォンや電子決済の急速な普及など外部環境の後押しに加え、フィンテックに対する企業の積極的な取り組みがあった。ただ、この分野は各国の事情が大きく異なり、中国企業も世界的なシェアを押さえるまでには至っていない。