子会社であるニューフレアテクノロジー(横浜市)に東芝が打ち出した株式公開買い付け(TOB)に対し、東芝を上回る高値でのTOBを発表したHOYA。2000年1月17日、東芝を除いてニューフレアの最大株主である東芝機械が、東芝のTOBに応募することを決定。ニューフレアは東芝の子会社になることで決着した。候補先の了解を得ない敵対的TOBという日本では珍しいHOYAの買収戦略であったが、結果的には実現しなかった。
HOYAによるニューフレア買収の背景
精密機械大手のHOYAは、ヘルスケア・メディカル部門において強固な事業基盤を確立しているが、「情報通信」部門も事業の柱と位置付けている。情報通信分野、特に半導体事業において、HOYAは複雑な回路パターンを半導体ウエハーに転写する際に原版として使う半導体マスクブランクスで世界トップ。ニューフレアテクノロジーが製造するビーム描画装置を使い、HOYAが製造するマスクに回路パターンを書き込むという川上・川下の関係にある。
HOYAは、半導体微細化において最先端の微細化技術であるEUV(極端紫外線)リソグラフィーにおいてもいち早く商用化を実現している。HOYAにとって、この最先端技術の収益拡大にはビーム描画装置の技術進歩が不可欠であり、ニューフレアテクノロジーの買収は何としても実現したかったところだろう。残念ながらこの買収が失敗したことで、HOYAは半導体製造部門において戦略を練り直す必要がある。
HOYAの研究開発力はトップクラス
HOYAの好調な業績は、高度な研究開発力に裏付けられている。日経500(日本経済新聞社が算出・公表する、東京証券取引所市場第一部に上場する500社)に属する大手精密機器業の中における保有特許の評価ランキングを、カネカと神戸大学が開発した特許評価「KKスコア」で調べたところ、HOYAは第3位となった(図1)。
研究開発でしのぎを削る大手精密機器メーカーの中で3位ということは、その研究開発力の水準は日本でもトップレベルと評価できる。こうした高い研究開発力に裏打ちされた事業の安定度は高いと見ることができる。