世界全体で地球温暖化対策に取り組むことに合意したCOP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)の動きを受け、世界の持続可能な開発目標(SDGs)のための取り組みとして、主要国は二酸化炭素(CO2)削減と再生可能エネルギーへの転換を強化している。
一方、企業の株主、特に大手機関投資家はESG〔環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)〕を重視した投資判断を強めており、ESGを投資のための評価ポイントの1つではなく、前提基準と捉えている。世界的には大企業を中心にRE100(事業運営に利用する全エネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的イニシアチブ)の取り組みが注目を集めており、その達成率が企業評価に結びつくようになってきている。
今やCO2削減と再生可能エネルギー利用が企業価値に直結する時代だ。
苦戦する日本のCO2削減
[1]日本の現状 電力部門が足を引っ張る
残念ながら、日本においてCO2削減は進んでいない。足を引っ張るのは発電・熱供給部門、中でも発電部門だ。2011年の東日本大震災以降、ほとんどの原子力発電所が稼働を停止し、火力発電がその穴を埋めたことによる。だが、グローバルな視点からは言い訳にはならない。
電気自動車の増加やIoT(Internet of Things)の拡充などで電力需要は底堅い。今後、電力需要は減らない前提でCO2排出量を削減する必要があり、早急に再生可能エネルギー発電を抜本的に増やす必要がある。これは、「可能な限り」ではなく、日本全体にとって「最優先」の課題だ。
[2]再生可能エネルギー発電はまだ大幅に不足
再生可能エネルギーによる発電電力量は過去5年間で年率平均35%伸びている。ドライバーとなったのは固定価格買い取り制度(FIT買い取り制度)による大口の太陽光発電で、再生可能エネルギー発電量全体の増加に寄与した(図1)。
ただ電力全体で見ると再生可能エネルギー(新エネルギー)の構成比は10%にも満たない。政府は2018年に発表した第5次エネルギー基本計画において、2030年における再生可能エネルギーの電源構成比を22~24%とする目標を掲げているが、かなり高いハードルだ。
さらに、原子力も加えた非化石率目標は44%となっており、現在の原子力の状況を考慮すると、この部分も再エネで賄う必要がある。目標達成はさらに困難なものと言える。
今後の伸び代を考えると、やはり太陽光発電を中心に設備を増やすことが現実的と思われる。ただ新規投資を考えた場合、大きな問題がある。
[3]太陽光発電を増やすには非FIT電力の買い取り価格の底支えが必要
その問題というのはFIT買い取り単価の下落だ。2012年に40円/kWhでスタートした大口(10kW以上)太陽光発電の買い取り単価だが、毎年低下を続け、2020年には、250kWh以上は入札、それ以下は12円/kWhにまで低下した。一方、現在の大口太陽光発電のFIT買い取り実績単価は35円/kWhを超えており、稼働している発電所のほとんどは初期のころに認可を受けたものと推測できる(図2)。
今後、新規投資や既存設備のリプレースに適用される買い取り単価がさらに下落すれば、新規投資の減少や、将来的には既存事業者の廃業につながることが予想される。一方で、いつまでも全需要家が支える補助金に頼った価格体系は持続可能ではなく、FIT買い取り単価の引き下げはやむを得ない面もある。
補助金が減っても事業を展開するためには非FIT再生可能エネルギー発電設備を増やす必要があり、そのためには非FIT電力の買い取り価格を底支えする必要がある。
[4]再生可能エネルギー利用の認証負担を軽減することも重要
価格が高くても、その電気が再生可能エネルギー由来であると分かれば、需要は大きい。ただ購入者がその証明を行うためには、実際の電気料金とは別にコストを支払って証書を購入する必要がある。
需要者側での再生可能エネルギー電力の認証には以下の3つの手法がある(図3)。この中では「J-クレジット」が最も割安だが、比較的規模の小さい事業者の利用が主体で、発電者側において認証を受けるための煩雑な手続きが敬遠され、実際の取引額は他の2つの手法に比べて大幅に小さい。
これらの規模を拡大し、価格を引き下げることも、再生可能エネルギー発電を増やすためには重要だ。