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 人件費はコストではない。むしろ人材(以下、人財)に対する投資であり、企業は人件費を投下することにより着実に利益を稼いでいる──。人財価値を分析した結果、給料水準が高いほど、従業員が稼ぐ利益は大きいことが分かった。利益を増やすには、むしろ給料水準を全体的に引き上げて、①優秀な人材を確保し、②従業員のモチベーションを高めて生産性を改善することが効果的だ。

給料水準が高いほど労働分配率が低い

 東証1部上場企業の労働分配率を見ると、単純平均では56%であるが、給与水準によって大きく異なる。図1は、給与水準のグループごとに労働分配率を見たものだ。東証1部上場企業の平均労働分配率は56%だが、内訳を見ると、給与水準が上がるにつれて労働分配率が低下することが分かる。つまり、給与水準が高いほど、付加価値に占める利益の割合が高いのだ。

* 労働分配率 付加価値に占める人件費の割合。人件費/(人件費+経常利益=付加価値)で表される。
図1●給与水準別に見た労働分配率
図1●給与水準別に見た労働分配率
「M」は100万円を表す。QUICKのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成。
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給料水準が高いほど経常利益への貢献度が大きい

 続いて、従業員がいくら経常利益を稼ぐかを給与水準ごとに分析したのが図2である。東証1部上場企業の1人当たり経常利益の平均は1090万円だ。内訳を見ると、給与水準が増加するにつれて等比級数的に増加し、例えば平均給与が1200~1600万円の水準では1人当たり経常利益は6000万円を超えている。

図2●給与水準別に見た1人当たり経常利益
図2●給与水準別に見た1人当たり経常利益
「M」は100万円を表す。QUICKのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成。
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 見方を変えて、給料の何倍の経常利益を稼いでいるかを示したのが図3だ。東証1部上場企業の平均ターンオーバー(1人当たり経常利益/平均給与)は1.5倍であり、従業員はおおむね自分の給料の1.5倍の利益貢献をしている。内訳を見ると、平均給与が800万円までは経常利益と給与はほぼ同じだが、800万円を超えた辺りからターンオーバーは増加し、給与の数倍の利益貢献を行っている。

図3●給与水準別に見たターンオーバー
図3●給与水準別に見たターンオーバー
ターンオーバー=1人当たり経常利益/平均給与。「M」は100万円を表す。QUICKのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成。
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 このように、給与水準が高い企業ほど、従業員の利益貢献度が高い。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で企業業績が悪化する中、人件費は費用として削減の対象として見られがちだが、事業の回復・拡大には、むしろ、給料水準を全体的に引き上げた方が効果的だ。

人財価値ランキング 人財価値の大きい企業は?

 平均的なターンオーバーを上回る利益貢献は、その従業員の価値と捉えることができる。そこで、「人財価値」を、経常利益に含まれる超過利益貢献、すなわち平均ターンオーバー(経常利益/平均給与)を上回る利益貢献と考え、そのランキングを「人財価値ランキング」として作成した。