2020年9月2日、「グローバル・イノベーション・インデックス(GII;Global Innovation Index、以下GII)」の2020年版が発表された。各国のイノベーションに関する能力の指標だ。日本は順位を前年から1つ落とし、16位となった(表1)。
アジアでは韓国、香港、中国が日本よりも上位にランクされた。また、トップ20からは漏れたが、ベトナム(42位)やインド(48位)、フィリピン(50位)などアジア圏の国がスコアを伸ばしてきていることが指摘された。
GIIの評価基準と日本の課題
GIIは、国連の専門機関の1つである世界知的所有権機関(WIPO)が米コーネル大学とフランスの経営大学院インシアード(INSEAD)と共同で2007年から発表しているものだ。国の制度や人的資本、インフラ、市場やビジネスの洗練度、テクノロジーに関するデータを基に、各国のイノベーション能力や成果を評価する指数である。国のイノベーションを評価する最も権威ある指標の1つとなっている。
日本のGII順位はこの調査が始まった2007年当初は4位からスタートしたが、その後2012年にかけて低下を続け、25位にまで落ちた。その後、徐々に回復していたが、2018年から再び低下傾向にある。この原因は、アウトプット・サブインデックスの低迷によるところが大きい(図1)。
GIIの評価は、イノベーションを創造する土台を評価するイノベーション・インプット・サブインデックスと、生産されたアウトプットを評価するイノベーション・インプット・サブインデックスを合わせて行われる(表2)。日本の場合、土台となるインプット・サブインデックスの順位は比較的安定しているのに対し、生産物の評価であるアウトプット・サブインデックスが低迷することで総合順位であるGIIの順位が伸び悩んでいる。
日本の評価が低いのは創造的な生産部門で、具体的には、文化的&創造的サービスの輸出に占める割合や、創造的な商品の輸出に占める割合、オンライン化アプリ製作の国内総生産(GDP)に占める割合などの順位が低い。日本の場合、自動車や機械など伝統的な産業の生産・輸出がまだ大きな割合を占めており、新しい産業の占めるシェアが相対的に低いことが根本的な原因と考えられる。
一方、産業の変革が着実に進む中で、こうした新しい産業の全経済に占める割合を高めることは早急に取り組むべき課題であり、その成果がこのGII順位を決めるという見方もできるだろう。