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 2020年に引き続き、上場企業について市場評価から知財価値を推定してランキングを作成した(基準日は2021年6月11日、表1)。前回は東証1部だけを対象としていたのに対し、今回は東証1部と東証2部、東証マザーズ(以下、マザーズ)を対象とした。その結果、東証1部では2年連続でキーエンスがトップ。また、今回初めて算出した東証2部とマザーズでは、それぞれアトムとメルカリがトップとなった。

 加えて、前回同様、知財価値/純資産倍率のランキングも作成した。この倍率では、東証1部では日本通信、東証2部ではアトム、マザーズではココナラがそれぞれトップとなった。この倍率は、知財価値が過小もしくは過大に評価されている可能性を示しているといえ、将来性の評価の妥当性を判断する指標として捉えることもできる。

表1●知財価値のトップと知財価値純資産倍率のトップ
表1●知財価値のトップと知財価値純資産倍率のトップ
(作成:正林国際特許商標事務所)
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知財価値の計算方法の復習 

 基本的に株価は将来利益の現在価値を反映していると考えられる。発行済み株式の全ての株価を集計したものが時価総額であり、時価総額はその企業の将来利益の現在価値を表していると捉えられる。実際には、各企業が公表している将来利益予想、あるいは証券アナリストなどが公表している将来利益をリスクプレミアムで割り戻したものが時価総額となっている。市場で想定されるリスクプレミアムに対して企業の自己資本当期純利益率(自己資本利益率;ROE)が高ければ株価は市場平均よりも高く評価され、ROEが低いと株価は市場平均よりも低く評価される。

 東証1部と東証2部、マザーズのそれぞれでリスクプレミアムが異なるので、今回は市場ごとに平均ROE、および平均時価総額/純資産(株価純資産倍率;PBR)を計算した。そして、当該企業の予想ROEと市場平均予想ROE、市場平均PBRを使って、当該企業における将来利益の現在価値を計算した。

将来利益の現在価値=当該企業の予想ROE×市場平均PBR/市場平均予想ROE

 特許やブランドなどの知財価値を除くと、基本的に時価でバランスシートに計上されている。そのため、それを活用して得られる将来利益のベースとして既にカウントされているはずであると考えた。よって、時価総額から将来利益の現在価値を差し引いたものが知財価値であると考えている。

知財価値=時価総額-将来利益の現在価値

 なお前回(2020年)の計算では予想ROEを使わず、直近の終了した決算期の実績を使った。ところが今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響で巨額の赤字を計上する企業が多く、実績ROEを使うと、巨額の赤字を計上した企業ほど知財価値が高く出るという不都合が発生した。実際の株価形成も予想利益を基に行われていることに鑑み、今回から予想利益が把握できる企業に限定して知財価値の算定を行っている。