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 2021年6月11日に東京証券取引所が発表し、同日に施行された「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針、改訂版)」 。そこに、知的財産に関する規定が新たに盛り込まれた。「知的財産情報の開示」と、「知的財産への投資について監督する取締役会等」の義務が明示されたのだ。上場会社は遅くとも2021年12月末までには改定コードに沿ってコーポレートガバナンス報告書を提出する必要があり、同年9月にも具体的な記載項目が発表される見通しである。

 この改定では「情報開示の充実」の項目に、「人的資本と並んで知的財産への投資と自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ、分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである」と記されている。

 加えて、「取締役会の役割・責務」の項目には、「人的資本・知的財産への投資等への経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するように実効的に監督を行うべきである」と記述されている。

 これまでも、知的財産に関して積極的な情報発信を行う企業は、自主的に情報開示を行ってきた。だが、改定によって全ての上場会社に対して知的財産情報の開示を義務付けた意義は大きい。

 改定されたコーポレートガバナンス・コードのうち、知的財産が強化された部分は次の通りだ。

第3章 適切な情報開示と透明性の確保
【原則3-1.情報開示の充実】
補充原則
3-1.③ 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。

第4章 取締役会等の責務
【原則4-2. (2)】
補充原則
4-2.② 取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべきである。 また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする 経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。

 つまり、上場企業にとって知的財産に関する情報開示が必須となる。取締役会などは知的財産への投資に関して責任を負わなければならないというわけだ。