日本の株式市場がにわかに活気づいてきた。今年に入り、特に米国の株高に比べて低迷していた日本の株価は、自由民主党の総裁選挙への変革期待などで2021年8月の終わりから急に上昇を始め、この半年で見ると米国の値上がり水準に追い付こうとしている。
こうした株価上昇が続くためには、新しい銘柄が上場することによる新陳代謝が重要だ。米国では伝統的な株式で構成されるダウ平均よりもSP500の方が株価の上昇率が高いが、このけん引役はGAFA〔Google(グーグル)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)〕に代表される米国の新興企業であり、続々上場する企業が高成長を維持して株価上昇を支えてきた。
こうした高成長企業の多くは差別化されたビジネスモデルを持っており、その知財は基本的にはグローバルに権利化されている。翻って日本の新規上場企業の知財、特に特許の権利化状況がどうなっているかについて検証した。
2020年、特許を持つグループの株価上昇
2020年に新規上場を果たした企業は全部で92社あったが、うち特許を公開・保有している会社(特許あり)は32社と、全体の35%にすぎない。しかしながら、公募価格に対する初値の騰落率(対初値騰落率)は、特許を公開・保有しているグループが平均で155%と特許を持たないグループの121%を大きく上回った。
また、上場後の初めての通期決算の対前年売上高伸び率でも、特許ありは19%と特許なしの12%を上回っている。これは、特許につながる差異化された技術が売上高の伸びにつながり、その結果、株価の上昇につながったものと考えられる。
ただし、特許の件数が多いほど株価が上がるかといえばそうではないことに注意すべきである。2020年に上場した企業のうち、最も多くの特許を保有していたのはローランドであるが、既に高い技術が十分に評価されていたこともあって公募価格が高くなり、対初値騰落率は-5%となった。
一方で、1件しか特許を保有していなかったヘッドウォータースの対初値騰落率は1090%となった。これは、それまで技術面での評価があまり認知されていなかった企業が上場によって評価され、値上がりにつながったものと考えられる。このように、株価に関しては、これまであまり認知されていなかった企業が上場をきっかけに高い評価を得る場合の方が、株価が上昇する可能性が高いと考えられる。