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 世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)*1日本事務所が、初めてとなる国内外の中小企業向けのシンポジウムを2021年12月2~3日に開催する*2。国内外の有識者や関係者が参加。イノベーション・サイクルを通して知財管理を行うためのツールや戦略を紹介しつつ、グローバルな競争力強化やオープン・イノベーション、SDGs(持続可能な開発目標)などの視点から、ビジネス戦略や事業展開に資する知的財産の役割について、多くの事例も交えて議論を行う予定だ。知財戦略や近年の知財の商業化に関する傾向も併せて紹介する。

*1 WIPO 全世界的な知的財産権の保護を促進することを目的とする国際連合の専門機関。1967年に設立され、スイスのジュネーヴに本部を置いている。
*2 WIPO国内外の中小企業向けのシンポジウム。半日のプログラムを2日間にわたってオンラインで開催する。
https://www.wipo.int/sme/ja/news/2021/news_0005.html

 このシンポジウムで講演を務める日之出産業(横浜市)は、微生物を活用した排水処理薬品とその薬品を使った設備、そして微細な空気泡(マイクロバブル)発生装置を製造する企業だ。その知財戦略が評価され、国内外の専門家やグローバル企業に交じって自社の事例を紹介する。

微生物を使った排水処理技術の特許出願が増加

 排水処理業界では、栗田工業やオルガノなどの大手企業が大規模工場向けに排水設備を納入し、中小の食品製造会社などはコストの安い中小企業に排水処理設備を発注するという構図が長く続いてきた。1度納入するとメンテナンス業務が発生することから受注活動には力を入れる一方、勘に頼った設計が行われ、技術革新にはあまり積極的ではなかった。発注者側も環境基準をクリアすればよいという意識が強く、品質よりもコストを重視する姿勢が長らく続いてきたようだ。

 ところが、環境意識の高まりとともに、品質が重視されるようになる。2001年には環境省が発足。それまでの公害防止という消極的な観点から、環境保全という積極的な観点での取り組みが求められるようになった。企業は環境保全への積極的な取り組みをアピールするようになり、排水処理結果の数値化や、より高品質の処理方法が求められるようになったのだ。

 こうした流れを受け、特許出願件数は増加を続けており、多くの企業や研究機関が出願を行っている。各社が積極的な研究開発を行っている業界なのである。

微生物を使った排水処理薬剤関連の特許出願件数の推移(出願日基準)
微生物を使った排水処理薬剤関連の特許出願件数の推移(出願日基準)
(特許調査支援サービス「PatentSQUARE」に基づき正林国際特許商標事務所が作成)
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