全1836文字
PR

ロシアが非友好国に対する知財保護を停止

 2022年3月10日付の米ワシントン・ポストは、ロシアが「非友好国」に指定した国の企業が保有する特許や商標について、これらを盗用しても合法にすると報じた。ロシア政府は同月7日に発した命令で、非友好国になった国の特許所有者に対する保護がなくなると宣言していた。これについてワシントン・ポストは、ロシア企業が許可なく特定の特許を使用しても損害賠償訴訟を起こさないということだと説明している。

 ロシアは同日、ロシアに対する制裁に参加した欧米諸国や日本、オーストラリア、韓国など48カ国を非友好国に指定した。この措置によれば、中国を除く主要な先進国の特許はロシア国内では守られないことになる。

最先端分野での出願に見劣り

 ロシアの前身である旧ソビエト連邦(ソ連)は、実は特許の出願に積極的だった。1980年の国際特許出願〔特許協力条約(PCT)+直接出願〕の件数は9万4582件で、2位の米国(6万1827件)を大きく上回ってトップだった。当時は冷戦のまっただ中であり、さらに米国のプロパテント政策が始まる前であったことを考慮しても、旧ソ連の特許に対する積極的な姿勢がうかがえる。当時はまだ、軍事的な技術は秘匿されていたが、国家主導で行ったさまざまな研究開発の成果が特許となっていたことが分かる。

 それから40年が経過して、現在のロシアの国際特許登録件数は世界第5位である。ただし、その件数は4位の韓国の4分の1程度と少なく、6位のインドに肉薄されている。

図1●国際特許登録件数の上位6カ国
図1●国際特許登録件数の上位6カ国
(WIPO IP Statistics Data Centerのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 最近の国際出願では特に中国の伸びが著しい。中国のPCT出願は大半が中国国内のみに移行していることを考えると、この件数をそのまま技術開発力とみることはできない。だが、それでもロシアの登録件数の低迷は、米中日韓との格差の広がりや、インドなどの新興国との競争激化を示すものと言える。

 さらに注目されるのは、その出願分野だ。ロシアの上位は医療技術(8%)や計測(7%)、土木(6%)、輸送(6%)などとなっており、最先端分野であるコンピューター技術やデジタル通信、半導体などが入っていない。こうした分野での特許出願が上位にないことは、米中日との格差が今後さらに広がることを示している。

 一方で、医療や製薬は上位に来てはいるものの、絶対的な件数で見劣りする。このため、この分野でも特に日米との格差は広がると予想される。

図2●ロシア、米国、中国、日本の国際特許出願分野
図2●ロシア、米国、中国、日本の国際特許出願分野
(WIPO IP Statistics Data Centerのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成)
[画像のクリックで拡大表示]