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 日本では起業の少なさがかねて指摘されており、2021年10月に発足した岸田内閣でも、成長戦略の中で「スタートアップ企業(以下、スタートアップ)への徹底支援」が掲げられている。これは岸田内閣以前から言われ続けていることだが、少なくとも報道を見る限りは改善されたような論調はない。

 実は、政府の税制優遇や補助金などの支援、投資家側でのベンチャー投資資金の準備は既にかなり手厚くなっていると考えてよい。特に公的な支援は元が税金でもあり、過度な支援は不公平感につながる可能性もある。

 むしろ、スタートアップ側で投資資金を受け入れる体制が整っていないことに問題があると思われる。投資家は投資したくても企業側に受け入れ態勢が出来上がっていなければ、残念ながら投資はできない。それでは、大型の資金調達に成功している企業の勝因は何だろうか。

ユニコーンネクスト

 2022年3月、フォースタートアップスが運営する「STARTUP DB」が「国内スタートアップ評価額ランキング最新版(2022年3月)」を公表した。一般に、時価総額が1000億円以上の企業は「ユニコーン」と呼ばれ、スタートアップの成功事例として評価される。しかし、想定時価総額は直近の1株当たりの調達額×総株数で計算するので、必ずしも正確に企業価値を表しているとはいえない。また、最終調達時期から時間がたっていても評価替えが行われないので、例えば急激に事業環境が悪化した場合でも昔の評価が残ってしまい、ミスリーディングとなる懸念もある。

 そこで今回は、想定時価総額ではなく、累積調達額に注目した。これなら実際に投資家の資金を受け入れた金額であり、企業価値評価の実態に近いと考えられるからだ。もちろん、調達が終わって巡航速度に入った企業もあるだろうが、研究開発費の負担は大きく、企業規模の大きいスタートアップは引き続き旺盛な資金需要を抱えていると思われ、累積調達額に注目する意味は大きい。

 想定時価総額の上位20社を累積調達額の順に並べ替えると、トップはSpiber(山形県鶴岡市)の1100億円。続いて、Mobility Technologies(東京・港) の471億円、スマートニュース(東京・渋谷)の442億円が続く。

図1●国内スタートアップ評価額ランキング上位20社を累積調達額の順に並び変えた
図1●国内スタートアップ評価額ランキング上位20社を累積調達額の順に並び変えた
(STARTUP DBのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成)
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 最終資金調達の時期を見ると、HIKKY(東京・渋谷)が2月に、HIROTSUバイオサイエンス(東京・千代田)とアストロスケールホールディングス(東京・墨田)、ビットキー(東京・中央)の3社が今年に入って調達を行っている。一方、クリーンプラネット(東京・千代田)、Global Mobility Service(東京・港)、Preferred Networks(東京・千代田)の3社は2年以上調達を行っていない。

図2●国内スタートアップ評価額ランキング上位20社を到達時期順に並び変え
図2●国内スタートアップ評価額ランキング上位20社を到達時期順に並び変え
(STARTUP DBのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成)
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 累積資金調達額の大きな企業の特徴は何か。ずばり、特許である。