裁判のための費用を支援する「リーガルファイナンス」事業を日本で初めて立ち上げた日本リーガルネットワーク。その代表取締役CEO(最高経営責任者)兼COO(最高執行責任者)の南谷泰史氏は、知財訴訟こそ支援の対象として最適だと力説する(図1)。その背景には、知財訴訟にかかる長い時間と高額な裁判所費用がある。
日本における特許訴訟件数は年間500~600件程度と、米国の年間3000件超、中国の約3万件と比べるとはるかに少ない。高額な費用になることから訴訟を断念するスタートアップ企業や中小企業が数多くあると南谷氏は見ている。
時間のかかる特許訴訟の実際
特許訴訟は、[1]特許そのものの有効性を争う訴訟(対特許庁訴訟)と、[2]権利を侵害した相手に対する訴訟(対権利侵害者訴訟)の2つに大別することができる。このうち、賠償を勝ち取るのは[2]の対権利侵害者訴訟である。
通常、対権利侵害者訴訟では、特許権の侵害の有無に関する「侵害論」と、損害額の算定に関する「損害論」の2段階を区別し、裁判所が「侵害論」で侵害ありという心証に至った場合のみ「損害論」の審理に入るという運用が一般化している。第一審は、東京地方裁判所または大阪地方裁判所の知的財産権専門部で審理され、計画審理の下で迅速な解決が図られているが、それでも審理期間が通常の民事訴訟よりも長く、権利者が賠償を得るためにかかる時間が格段に長くなっている。
第1ステップ:地方裁判所
地裁の受け付けは毎年500~600件程度で推移している(図2)。平均審理期間は2018年度に12.3カ月まで短縮された後、2021年度では15.2カ月と新型コロナウイルス禍の影響などでやや長期化した。この15.2カ月は平均的な民事訴訟の審理期間である9.9カ月(2021年度)と比べると1.5倍ほど長い。