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 2023年、欧州統一特許裁判所協定(Unified Patent Court Agreement::UPCA)が発効され、欧州単一効特許(UP)の運用が開始される見通しである。現時点では、UPCA発効はドイツがいつ批准するかにかかっている。既にドイツ議会は法案を可決済みで、ドイツの裁判所も関連する異議申し立てを棄却。2022年1月19日に正式な準備期間が開始されたことから、11月中にはドイツが批准すると予想されており、運用開始は2023年3月からになる見込みである。

PCT国際出願制度は国ごとの出願が必要

PCT国際出願制度の流れ
PCT国際出願制度の流れ
(出所:特許庁の資料を基に正林国際特許商標事務所が作成)
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 出願日(優先日)を確保するために特許協力条約(Patent Cooperation Treaty:PTC)国際出願制度がある。自国の特許機関に申請することで、将来海外において特許出願を行う際の出願日を確保する手段である。PCTに基づく国際出願とは、1つの出願願書を条約に従って提出することにより、PCT加盟国である全ての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度だ。PCTには156カ国が参加しており、主要国は全て対象となっている(2022年10月末現在)。多くの国に同時に出願を行うことは煩雑で、まずは優先日を確保する制度として多く使われている。

 ただし、この制度では優先日から30カ月以内に、権利を取りたいPCT加盟国が認める言語に翻訳した文章をその国の特許庁に提出し、その国が求める場合には手数料を支払う必要がある。つまり、出願手続きは国ごとに必要であることから手続きは煩雑である。

欧州独自の発展を遂げたが出願のまとめにとどまる

 特許は属地主義を採るため、権利保護を受けるためには対象国全てにおいて特許の登録が必要だ。欧州は国の数が多く、国際特許を出願する側からすると、その手続きの煩雑さや費用がネックとなっていた。

単一特許とEP特許と欧州単一特許の違い
単一特許とEP特許と欧州単一特許の違い
(出所:正林国際特許商標事務所)
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 このため、1978年以降、1つの欧州特許を出願することで加盟国全ての特許を取得する制度〔欧州特許(European Patent、以下EP特許)〕が発効した。この制度を使えば、出願人はEU(欧州連合)加盟国他30カ国への出願をまとめて行うことができる。国によって言語も出願手続きも異なることから、1回の出願で30カ国への出願が同時にできる制度は極めて便利といえる。