PR
全3160文字

 ロケットの逆噴射による着陸で、機体の回収・再利用できるようにした米スペースX(Space X)の「ファルコン9」ロケット。同ロケットにとって唯一の先例となる回収・再利用型の宇宙輸送システムが、1981年から2011年にかけて運用された米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトルだ。スペースシャトルは、運航コストが当初見通しを大幅に上回り、宇宙輸送システムの低コスト化という目標を達成できなかった。スペースシャトルとファルコン9を比較すると、ファルコン9がどのようにスペースシャトルの失敗から学び、発想を転換したかが見えてくる。

帰還するスペースシャトル「アトランティス」。スペースシャトルは、重量物である主エンジン、帰還用の翼などをすべてオービターに装備しており、1度地球周回軌道に入れてから持ち帰る。エンジンは打ち上げ時にのみ、翼は帰還時にのみ使用する。(出所:NASA)
帰還するスペースシャトル「アトランティス」。スペースシャトルは、重量物である主エンジン、帰還用の翼などをすべてオービターに装備しており、1度地球周回軌道に入れてから持ち帰る。エンジンは打ち上げ時にのみ、翼は帰還時にのみ使用する。(出所:NASA)
[画像のクリックで拡大表示]

重たい主エンジンをいったん地球周回軌道に入れてから回収するシャトル

 まずスペースシャトルの基本的な構造を見てみよう。スペースシャトルの打ち上げシステムは、3つの要素で構成される。3基の主エンジン「SSME」と三角形のデルタ翼を持つ「オービター」、SSMEに供給する液体酸素と液体水素を積むための「外部タンク」、打ち上げ初期に必要な推力を発生する2本の「固体ロケットブースター」である。打ち上げ時の全高は56mで打ち上げ時の重量は約2030tだ。

 打ち上げ時にはまず、打ち上げ6秒前にオービター後部の主エンジンを点火し、その動作を確認した後に固体ロケットブースターを点火して上昇を開始する。打ち上げ後2分で、固体ロケットブースターは燃え尽きて分離。その後は主エンジンのみで加速し、打ち上げ後8分30秒で主エンジンを停止して、外部タンクを分離して弾道軌道に入る。最後にオービターの胴体上部後端に装着された軌道変換用エンジンで加速して、オービターだけが地球を周回する軌道に入る。

 分離した固体ロケットブースターはパラシュートを装備しており、フロリダ沖合の大西洋に着水後、回収する。分解点検を行って再度、固体推進剤を充填して再利用する。外部タンクはだいたい地球を半周し、大気圏に再突入して燃え尽きる。1回限りの使い捨てだ。

 宇宙でのミッション終了後、オービターは軌道変換用エンジンで減速して大気圏に突入グライダーのように滑空して着陸する。着陸後、オービターは整備して再使用する。設計上は100回の宇宙飛行できるとなっていた。しかし、実際には「チャレンジャー」「コロンビア」「ディスカバリー」「アトランティス」「エンデバー」と5機製造したオービターの中では、ディスカバリーの39回の飛行が最高だった。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

有料会員と登録会員の違い