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 イーロン・マスクとスペースXは、比較的様々な情報を公開している。特に派手な将来構想についてのプレゼンテーションは熱心だ。

 同時に、その将来構想はあくまでも構想であって、次々に変更が加えられる。イーロン・マスク本人のエキセントリックな言動と相まって、これまでにかなりのファルコン9による打ち上げ実績を積み重ねてきたにもかかわらず「どことなく不安で危なっかしい」という印象を与える。

 これに対して、米国のニュースペースのもう一方の雄であるブルーオリジンは、いたずらに不安を振りまくようなことはしない。これまでの打ち上げ実績は、弾道飛行を行う有人宇宙船「ニューシェパード」の試験打ち上げのみだ。衛星打ち上げ用ロケット「ニューグレン」は現在開発中で、初打ち上げは2020年を予定している。

弾道飛行有人宇宙機「ニューシェパード」の打ち上げ(出所:ブルーオリジン)
弾道飛行有人宇宙機「ニューシェパード」の打ち上げ(出所:ブルーオリジン)
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 同社は情報を必要最小限しか開示しておらず、その事業はどこか謎めいている。しかし、それら少ない情報からも同社の技術開発が地に足が着いたもので安定していると分かる。ニューグレンは初号機打ち上げ前から、幸先よく幾つもの商業打ち上げ契約を獲得している。

 CEOであるジェフ・ベゾスの志向も、スペースXのイーロン・マスクCEOとは異なる。イーロン・マスクが火星を目指すのに対して、ブルーオリジンのジェフ・ベゾスCEOが目指すのは月、大規模な月植民地である。

ベゾスが起こした宇宙ベンチャー

 ブルーオリジンは、ネットの書籍通販から始まり、今やクラウドビジネスで世界的な情報と物流の大手となった米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の創業者であるジェフ・ベゾスが、2000年に設立した宇宙ベンチャーだ。ブルーオリジンはその立ち上げ以来、極度の秘密主義でほとんど情報を開示しなかった。そのため、長らく同社は何をやっているのかまったく分からなかった。

 その後に公開された情報から推測すると、同社はロケットエンジンの開発と、ロケットの逆噴射による垂直着陸技術の開発を延々と続けていたようだ。ロケットエンジンは推力9kN(900kgf)級の「BE-1」、同140kN(14tf)級の「BE-2」、490kN(50tf)級の「BE-3」と大型化し、現在は2400kN(240tf)級の「BE-4」を開発している。その他、月着陸船「ブルームーン」用に40kN(4tf)級の「BE-7」の開発を表明しており、当然ながら未公表の「BE-5」「BE-6」についても何らかの開発を進めていると推定される。

現在開発中の大型エンジンBE-4(出所:ブルーオリジン)
現在開発中の大型エンジンBE-4(出所:ブルーオリジン)
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BE-4燃焼試験の様子(出所:ブルーオリジン)
BE-4燃焼試験の様子(出所:ブルーオリジン)
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