優秀な人材をなかなか採用できないと嘆く企業は多い。売り手市場では仕方ない面もあるが、それでも工夫の余地はある。即効性のある具体策を探った。
採用難の時代、企業の経営者や人事担当者を悩ませるのが、新卒採用したくなる就活生はどこにいて、どうアプローチするのかだ。多くの人事担当者がまだ気づいていない、優れた人材を確保するアプローチ術を紹介しよう。
「新たな動きが出てきています」――。こう語るのは、法政大学キャリアセンターの内田貴之課長だ。同氏によれば、19年採用でIT企業にSE(システムエンジニア)として就職する女子学生が数十人増加したという。
背景にあるのは一般職の廃止・縮小だ。銀行などの金融や商社、電機メーカーなどが一般職の募集を縮小させている。今シーズンも、三井住友銀行が20年採用から一般職を廃止したほか、みずほフィナンシャルグループはデジタル技術を生かしたコスト削減として支店の事務や窓口業務を担う職種の採用数を絞った。その結果、一般職を志望していた就活生の受け皿としてIT企業に人材が流れそうだという。
内田課長は「IT企業の多くは都内に会社があり、転勤が少ない。さらにはSCSKのような働き方改革に積極的な企業の事例もあり、以前のような残業が多いといったイメージが薄れてきた」ことが女子学生層に刺さっていると分析している。
形だけの働き方改革を実施している企業だと厳しいが、自信がある企業にとっては20年や21年採用は狙い目となりそうだ。積極的にアプローチしてみる価値は十分にある。
インターンで引き付ける
採用活動の王道ともいえるリクナビやマイナビなどのナビサイトは相変わらず活況だ。例えばリクナビは19年3月1日のオープン時点で掲載社数が3万を超え、前年の2万2000社を大きく上回っている。増加傾向はマイナビやキャリタスなど他サイトでも同様で、採用難を背景に企業が一段と頼みにしている状況がうかがえる。
しかし、ある製造業の人事担当者は「ボリュームゾーンの採用には適しているが、上位10%に相当する幹部候補を採用するには物足りない」と不満を漏らす。他の精密大手の担当者も「上位校の割合などKPI(成果指標)を自社で定めているが、ナビサイトだけではKPIを満たすのが難しい」という。
この人事担当者によると、「毎年のダイレクトメッセージへの反応を見ると、東京大学や早稲田大学、慶応義塾大学など上位校の就活生は、大手ナビサイトに登録はしているものの、あまり使っていないのでは」と感じている。
ナビサイトに頼らない工夫として、ここ数年で一気に浸透してきたのがインターンシップだ。大学3年生の夏など、就活シーズンのはるか前に動く大学生は「意識が高い=優秀」との認識が広まり、企業はこぞってインターンシップを開催した。キャリタスの調査によると実施率は7年連続で上昇し、18年の実施率は74.9%まで高まっているという。