告示98号では、国土交通省が実施した実態調査を踏まえ、略算表に示す標準業務量を見直した。旧告示と比べ、3000m2付近を境に小規模建築物の標準業務量が減少。中小規模事務所には厳しいルール変更となった。
「当会の会員は1000m2から5000m2規模を中心に手掛けている事務所が多い。基準の改訂で、会員事務所は報酬面でかなりのダメージを受ける」(日本建築士事務所協会連合会の佐々木宏幸会長)
告示98号は、旧告示では示されていなかった500m2以下と、2万m2以上の規模の標準業務量を示した。加えて、略算表に示す標準業務量を見直した。国交省が実施した実態調査で、有意な結果が得られなかった戸建て住宅は変更していない。
告示98号で示した略算表の標準業務量については、妥当性を疑問視する声もある。中小規模事務所の関係者が指摘するのは、規模が小さくなるほど、旧告示よりも標準業務量が小さくなる点だ。
日経アーキテクチュアは、例として事務所など標準的な業務施設(第4号の第1類)における標準業務量を、告示98号と旧告示15号で比較した。各面積における標準業務量をプロットし、近似曲線で結んだ〔図1〕。
告示98号はグラフが直線的になり、大規模な建築物における標準業務量は大幅に増加した。その一方で、3000m2付近を境に中小規模の標準業務量は減少。500m2規模では、旧告示と比較して半減した。商業施設など、他の用途の施設でも同様の傾向が見られる。
監理の業務量が6割減も
北海道建築士事務所協会は告示案のパブリックコメントの段階で、国交省に対し、標準業務量の見直しを求める意見を出した。同協会の庄司雅美会長は、「中小規模の建築物を手掛ける事務所が減少する可能性がある」と指摘。「民間業務で求められるのは、いかに安くできるかということ。告示で示された基準からどこまで安くできるかと問われかねない。報酬と業務量が見合わず、受注したくても受注できないといった事態が発生する恐れがある」と懸念する。
中小規模の標準業務量が減少した中でも、庄司会長は工事監理の業務量の減少幅が大きいことを問題視する〔図2〕。旧告示と比較して約6割も減少している規模もある。
「近年、施工現場での品質低下が問題となるケースが目立つ。報酬が減額される一方で、これまで以上の業務を求められると、事務所の運営がままならない状態に陥りかねない」(庄司会長)
工事監理の標準業務とされる「工事と設計図書との照合および確認」については、国交省が工事監理ガイドラインを定め、具体的な照合の内容や方法を示している。適切な報酬を得るためには、標準外業務を明確にし、発注者の理解を得ることが不可欠だ。