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 政府主導による料金引き下げ施策の影響で業績悪化に苦しみ続けた携帯大手3社。だが動画サービスの利用拡大などによってARPU(アープ、契約当たり月間平均収入)の下げ止まり傾向が見え、最悪の時期を脱しつつある。大容量プランの契約増により、3社はモバイル通信事業を再び成長軌道に乗せることができるだろうか。

料金引き下げ影響からの回復が鮮明に

 2020年に菅義偉前首相の政権下で進められた、政府主導による携帯電話料金の引き下げ施策。それに応じる形で2021年には、携帯各社が料金を引き下げ、より解約しやすい新たな料金プランを投入したことで業績が大幅に悪化、業界に悪影響をもたらしたことは記憶に新しい。

 だがここ最近の各社の業績を見るに、先行投資で赤字が続くなど特殊要因が多い楽天モバイルは別とすれば、それ以外の大手3社は料金引き下げの影響から徐々に回復しつつあるようだ。それは3社が2022年11月に公表した2022年度第2四半期決算の内容から見て取ることができる。

 ソフトバンクは、携帯料金引き下げによる減益の影響が2021年度に770億円、2022年度には900億円と予想している。だが、これがピークとなり2023年度には500億円にまで減少、以後はその影響も大幅に縮小すると予想している。

ソフトバンクは携帯料金引き下げによる減益影響が2022年度にピークを迎え、2023年度以降は減少すると予想している。写真は2022年11月4日のソフトバンク決算説明会から(筆者撮影)
ソフトバンクは携帯料金引き下げによる減益影響が2022年度にピークを迎え、2023年度以降は減少すると予想している。写真は2022年11月4日のソフトバンク決算説明会から(筆者撮影)
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 またKDDIも、これまで減少を続けてきた通信ARPUが2022年度第2四半期へ増加に転じている。実際には2022年7月に発生した大規模通信障害による返金の影響で減少が続いているのだが、そうした特殊要因がなければ回復基調にあることが分かるだろう。

KDDIの2022年度第2四半期決算説明会資料から。これまで下がり続けていた同社の通信ARPUは、通信障害による返金の影響がなければ2022年度第2四半期は増加に転じていた
KDDIの2022年度第2四半期決算説明会資料から。これまで下がり続けていた同社の通信ARPUは、通信障害による返金の影響がなければ2022年度第2四半期は増加に転じていた
(出所:KDDI)
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 各社の伸びを支えているのは、1つに契約数の増加であろう。2022年は楽天モバイルが月額0円で利用できる仕組みを廃止したため他社への流出が起こったことや、KDDIの通信障害の影響でサブ回線需要が高まったことなどから、低価格の料金プランを主体に契約数が伸びたのは確かだ。

 だが今後より重要になってくるのが、大容量プランの契約が増えていることである。NTTドコモは2022年度第2四半期決算で、「5Gギガホ プレミア」「ahamo」などの中・大容量プラン契約者が前年同期比で30%伸び、1000万契約を超えたとしている。

NTTドコモは2022年度第2四半期において、中・大容量プランが前年同期比で30%増の1000万契約に達したとしており、より大きな容量のプラン契約者が増えている状況を示している。写真は2022年11月8日のNTT決算説明会より(筆者撮影)
NTTドコモは2022年度第2四半期において、中・大容量プランが前年同期比で30%増の1000万契約に達したとしており、より大きな容量のプラン契約者が増えている状況を示している。写真は2022年11月8日のNTT決算説明会より(筆者撮影)
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 2022年11月8日に同社の親会社である日本電信電話(NTT持株会社)が実施した決算説明会で、NTTドコモの代表取締役社長である井伊基之氏はその理由として「YouTube」を挙げていた。YouTubeの利用が若い世代だけでなく、上の世代に広まってきたため映像のトラフィックを大きく伸ばし、より大容量のプランを契約する契機になっているという。