全3286文字
PR

 2020年末に発表した新料金プラン「ahamo(アハモ)」で、市場に大きなインパクトを与えたNTTドコモ。だがライバル他社との競争力を高めるにはahamoだけでは不足している要素も多く、抱えている課題は少なくない。NTTドコモはその難題を乗り越えられるのだろうか。

井伊新体制は「ahamo」で上々な滑り出し

 2020年後半、菅政権の発足で携帯電話料金に関する動向に注目が集まった。中でも料金競争で大きなインパクトを残したのがNTTドコモだ。

 NTTドコモは2020年12月3日に新料金プラン「ahamo」を発表。スマートフォンに詳しい20代の単身者にターゲットを絞り、ドコモショップでのサポートをカットすることで月額2980円(税別)、かつ20GBの高速データ通信量が利用できるという内容の充実ぶりで、たちまち大きな評判となったことは記憶に新しい。

NTTドコモが2020年12月3日に発表した新料金プラン「ahamo」は、契約やサポートをオンラインに絞って月額2980円(税別)、20GBの高速データ通信量が利用できるというお得感からたちまち注目の的となった。写真は同日に実施されたNTTドコモ「今後の料金戦略に関する発表会」より(筆者撮影)
NTTドコモが2020年12月3日に発表した新料金プラン「ahamo」は、契約やサポートをオンラインに絞って月額2980円(税別)、20GBの高速データ通信量が利用できるというお得感からたちまち注目の的となった。写真は同日に実施されたNTTドコモ「今後の料金戦略に関する発表会」より(筆者撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 ahamoの与えたインパクトの大きさを示したのが、その約1週間後となる2020年12月9日にKDDIが発表したauブランドの新料金プラン「データMAX 5G with Amazonプライム」の発表会である。この料金プランは従来提供されている「データMAX 5G」などと大きく変わらない仕組みにもかかわらず、期間限定など複雑な値引きの仕組みが存在すること、値引き前の料金を発表会で提示しなかったことなどが、ahamo対抗プランを求めた消費者の怒りを買いSNSで炎上する事態にまで発展したのだ。

KDDIはahamo発表の約1週間後となる2020年12月9日に、auブランドの新料金プラン「データMAX 5G with Amazonプライム」を発表したが、複雑な割引の仕組みや、割引前の料金を提示しなかったことが不誠実に映り、SNSで炎上を招く事態となった。写真は同日の「au新サービス発表会」より(筆者撮影)
KDDIはahamo発表の約1週間後となる2020年12月9日に、auブランドの新料金プラン「データMAX 5G with Amazonプライム」を発表したが、複雑な割引の仕組みや、割引前の料金を提示しなかったことが不誠実に映り、SNSで炎上を招く事態となった。写真は同日の「au新サービス発表会」より(筆者撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 そうしたahamoの人気の高さを受け、ソフトバンクは2020年12月22日、緊急に料金プランの見直しを発表。傘下のLINEモバイルを完全子会社化した後に吸収し、ahamo同様オンラインでのサービスを主体とした「SoftBank on LINE」というブランドコンセプトの新サービスを提供することを発表している。

ソフトバンクは2020年12月22日に新料金プランの発表会を実施。ahamo対抗のブランドコンセプト「SoftBank on LINE」などを打ち出している。写真は同日に実施されたソフトバンク「新しい料金サービスに関する発表会」より(筆者撮影)
ソフトバンクは2020年12月22日に新料金プランの発表会を実施。ahamo対抗のブランドコンセプト「SoftBank on LINE」などを打ち出している。写真は同日に実施されたソフトバンク「新しい料金サービスに関する発表会」より(筆者撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 またKDDIも2021年1月13日にはahamo対抗のオンライン専用料金プラン「povo(ポヴォ)」を打ち出している。これだけ各社が相次いで対抗策を打ち出すに至ったのには、それだけahamoが消費者に与えたインパクトが大きかったが故といえる。そうした意味でも、2020年12月に代表取締役社長に就任した井伊基之氏の新体制によるNTTドコモは上々のスタートを切ったといえるだろう。

 だが、ahamoだけでNTTドコモの競争力が高まるわけではない。業績の回復、さらには大手3社で最も少ないとされる利益を増やすには多くの課題があり、井伊体制のNTTドコモがクリアできるかどうかはまだ分からない。