2020年末に発表した新料金プラン「ahamo(アハモ)」で、市場に大きなインパクトを与えたNTTドコモ。だがライバル他社との競争力を高めるにはahamoだけでは不足している要素も多く、抱えている課題は少なくない。NTTドコモはその難題を乗り越えられるのだろうか。
井伊新体制は「ahamo」で上々な滑り出し
2020年後半、菅政権の発足で携帯電話料金に関する動向に注目が集まった。中でも料金競争で大きなインパクトを残したのがNTTドコモだ。
NTTドコモは2020年12月3日に新料金プラン「ahamo」を発表。スマートフォンに詳しい20代の単身者にターゲットを絞り、ドコモショップでのサポートをカットすることで月額2980円(税別)、かつ20GBの高速データ通信量が利用できるという内容の充実ぶりで、たちまち大きな評判となったことは記憶に新しい。
ahamoの与えたインパクトの大きさを示したのが、その約1週間後となる2020年12月9日にKDDIが発表したauブランドの新料金プラン「データMAX 5G with Amazonプライム」の発表会である。この料金プランは従来提供されている「データMAX 5G」などと大きく変わらない仕組みにもかかわらず、期間限定など複雑な値引きの仕組みが存在すること、値引き前の料金を発表会で提示しなかったことなどが、ahamo対抗プランを求めた消費者の怒りを買いSNSで炎上する事態にまで発展したのだ。
そうしたahamoの人気の高さを受け、ソフトバンクは2020年12月22日、緊急に料金プランの見直しを発表。傘下のLINEモバイルを完全子会社化した後に吸収し、ahamo同様オンラインでのサービスを主体とした「SoftBank on LINE」というブランドコンセプトの新サービスを提供することを発表している。
またKDDIも2021年1月13日にはahamo対抗のオンライン専用料金プラン「povo(ポヴォ)」を打ち出している。これだけ各社が相次いで対抗策を打ち出すに至ったのには、それだけahamoが消費者に与えたインパクトが大きかったが故といえる。そうした意味でも、2020年12月に代表取締役社長に就任した井伊基之氏の新体制によるNTTドコモは上々のスタートを切ったといえるだろう。
だが、ahamoだけでNTTドコモの競争力が高まるわけではない。業績の回復、さらには大手3社で最も少ないとされる利益を増やすには多くの課題があり、井伊体制のNTTドコモがクリアできるかどうかはまだ分からない。