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 2021年より進められていた、国内での周波数オークション導入に関する議論。総務省は2022年11月にその検討会の取りまとめを公表し、大枠の方針としてオークション方式の導入を打ち出した。だがその対象はミリ波帯などに限定され、プラチナバンドなどには適用されないようだ。なぜ周波数オークションの対象が限定されたのだろうか。

オークションの対象はミリ波などに限定

 諸外国では導入されているが日本では長らく導入されていなかった「周波数オークション」。電波の周波数免許をオークションで落札する制度だが、総務省はその導入に向け2021年10月より「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」という有識者会議を開催して議論を進めてきた。

 周波数オークションは電波の価値をお金で決める形となるため、審査基準が分かりやすく公平性を担保しやすい。加えて行政側にとっては新たな収入源にもつながるなどメリットが多い。一方で携帯電話事業者からすれば、オークションによって免許獲得の価格が高騰し負担が増える可能性があること、そして体力のある事業者が免許を買い占めてしまう可能性があることなど、デメリットが多い仕組みでもある。

 そうしたことから周波数オークションの導入に向けては、最大手のNTTドコモが前向きな姿勢を示す一方、新興の楽天モバイルは強く反対の姿勢を示すなど、事業者によって賛否が大きく分かれていた。それだけに議論の行方が注目されていたのだが、総務省は2022年11月25日に先の検討会の取りまとめを発表、周波数オークションの導入に向けた方向性を打ち出している。

 その内容を見ると、行政側が設ける基準に沿って事業者から資料を提出してもらい、審査して割り当て先を決める従来の「比較審査」方式に加え、電波を割り当てる際にエリアカバーの条件などを課す「条件付きオークション」を選べるようにするよう、検討を進めることが適当とされている。周波数オークション自体が導入されることは確実といえるだろう。

 だが条件付きオークションを選択できる対象は全ての周波数帯ではなく、「ミリ波等の高い周波数帯や他の無線システムとの周波数共用が必要となる周波数帯」と限定されている。プラチナバンドのような低い周波数の免許割り当てには従来通りの比較審査のみが用いられることになるようだ。

総務省「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」取りまとめ概要より。周波数オークションはミリ波や、他の無線システムと共用が必要な帯域の割り当ての際に選択できるようになった
総務省「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」取りまとめ概要より。周波数オークションはミリ波や、他の無線システムと共用が必要な帯域の割り当ての際に選択できるようになった
(出所:総務省)
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