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 携帯電話向け周波数帯の再割り当てに関する議論が総務省で進んでいる。議論の中心になっているのは、楽天モバイルが切望しているプラチナバンドの再割り当てである。政治家との太いパイプを生かしプラチナバンド再割り当てを優位に進めたい楽天モバイルだが、ルールが整備されてもプラチナバンドの利用がスムーズに進むかというと、見通しが難しい部分があるように感じる。

周波数帯免許再割り当てに向け法整備が進む

 携帯電話事業者に割り当てられている電波の周波数免許は、一度割り当てられたら各社とも更新して使い続ける傾向にある。だが総務省は公正競争促進と電波の有効利用の観点から、周波数免許の再割り当てをする仕組みの整備が必要であるとし、その実現に向けた議論が進められてきた。

 その結果として、携帯電話などの周波数の再割り当てができるよう電波法を一部改正する法案が2022年2月4日、第208回通常国会に提出されている。そしてこの法改正が施行された場合、携帯電話などが使用している周波数は3つの条件に基づき再割り当てができるようになる。

 1つ目は「電波監理審議会による有効利用評価の結果が一定の基準を満たさない」とき、2つ目は「電波の公平かつ能率的な利用を確保するため、周波数の再編が必要と認める」とき。そして3つ目、最も重要なポイントとなるのが「競願の申し出を踏まえ、再割り当審査の実施が必要と総務大臣が決定した」ときである。

総務省「デジタル変革時代の電波政策懇談会」令和4年度フォローアップ第1回資料より。国会に提出中の電波法の一部改正案では、3つの条件から携帯各社に割り当てられている周波数帯免許の再割り当てができるとしている
総務省「デジタル変革時代の電波政策懇談会」令和4年度フォローアップ第1回資料より。国会に提出中の電波法の一部改正案では、3つの条件から携帯各社に割り当てられている周波数帯免許の再割り当てができるとしている
(出所:総務省)
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 つまり法改正が施行された後、より周波数の有効活用ができるという事業者が手を上げれば、審議の末に他社が使っている周波数免許の再割り当てを受けられる。要は他社から周波数を“奪う”ことができるようになるわけだ。そしてこの法改正の実現が大きな意味を持ってくるのが楽天モバイルである。

 楽天モバイルは新規参入事業者ということもあって割り当てられている周波数帯がまだ少なく、とりわけ同社が割り当てを切望しているのが1GHz以下のいわゆる「プラチナバンド」である。プラチナバンドは障害物の裏に回り込みやすく、広範囲をカバーするのに適していることから、携帯電話事業者がエリア整備をする上で優位性の高い帯域とされている。

 そして楽天モバイルは携帯電話4社で唯一、プラチナバンドが割り当てられておらずエリア整備の面で他の3社より不利な状況にある。それゆえ同社はプラチナバンドの早期再割り当てを経営上の最重要課題と位置付けており、総務省の有識者会議などでもプラチナバンドの再割り当てを強く訴えてきた。