楽天モバイルが縮小を急いでいたKDDIとのローミングを一転して積極活用し、「Rakuten最強プラン」を提供したことが話題となった。
ほかにもNTTが主導する次世代ネットワーク構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」への参画やインターネットイニシアティブ(IIJ)への出資、そしてソフトバンクと連携しての「副回線サービス」提供など、KDDIを軸とした通信事業者同士の連携が急速に進んでいるようだ。その背景には何があるのだろうか。
赤字の楽天モバイルがローミング強化にかじ
楽天モバイルは2023年5月12日、発表会を突如実施した。そこで発表されたのが、2023年6月1日に提供を開始する新料金プラン「Rakuten最強プラン」である。
Rakuten最強プランは従来の料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」と比べ料金などにあまり変化はない。だが大きく変わった点が1つある。KDDIとのローミングで賄っているエリアの扱いだ。従来はローミングエリアで通信した場合にはデータ通信が使い放題にならなかった。ところがRakuten最強プランではローミングエリアでも使い放題になる。
Rakuten最強プランの提供に大きく影響したとされているのが、前日の2023年5月11日に発表されたKDDIとの新たなローミング協定締結である。この協定ではローミングの期間が2026年9月までとおよそ半年延長されるとともに、従来ローミングの対象となっていなかった東京23区や名古屋市、大阪市の繁華街の一部も新たに対象に加えるとしている。
このローミング協定およびRakuten最強プランの提供により、楽天モバイルはこれまで自社インフラに重点を置き縮小を図ってきたローミングを一転してフル活用するという大きな戦略転換を図ったこととなる。
そこに影響しているのは楽天モバイルが抱える巨額の赤字である。赤字解消のためにインフラ投資を大幅に抑えつつ、ユーザーの不満要素となっていた通信品質を改善する狙いが大きい。
今回の戦略転換によって楽天モバイルは3年間で3000億円の設備投資が抑えられるとしている。戦略転換でコスト的に大きな恩恵があるのは確かだ。ただローミング協定の見直しをするには、KDDIの意向を無視できないだろう。