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 携帯電話料金の引き下げを政権公約に掲げた菅義偉内閣総理大臣が、2021年9月30日の任期をもって退任することが明らかになった。菅政権の施策によって確かに携帯料金は短期間で大幅に下がった。しかし、競争促進のルール整備ではなく通信業界、とりわけ携帯大手3社に強い圧力をかけてそれを実現したことが、多くの禍根を残したのも事実だ。菅政権の通信行政を改めて振り返ってみたい。

「ahamo」を機に進んだ携帯料金引き下げ

 安倍晋三前総理の病気による退任を受け、2020年9月16日に内閣総理大臣に就任した菅義偉氏。その菅氏が次期自民党総裁選に出馬せず、2021年9月30日の任期をもって退任することが明らかになった。わずか1年という短期間での退任となる菅氏だが、そのわずかな期間のうちに携帯電話業界には大きな影響をもたらしている。

 総務大臣経験があり、総務省に強い影響力を持つとされる菅氏は、官房長官時代から携帯電話料金は4割引き下げる余地があるといった旨の発言するなど、携帯電話料金の引き下げに非常に熱心なことでも知られていた。そうしたことから菅政権の発足以降、携帯電話料金の引き下げは政権の主要政策の1つとなり、菅政権下で総務大臣に就任した武田良太氏を通じて携帯電話料金の引き下げ実現に向けた施策を強化してきた。

 その結果もたらされた成果が、就任から約半年のうちに携帯電話各社の料金が大幅に下がったことだ。そのきっかけとなったのは大手3社によるオンライン専用プランの投入であろう。菅氏が携帯電話料金の引き下げに執心する根拠となっていたのは総務省の「電気通信サービスに係る内外価格差調査」である。この調査で、大容量とされていた通信量20GBのプランの料金は、世界主要6都市の中で東京が最も高い水準にあったことが大きいといわれている。

令和元年度(2019年度)の「電気通信サービスに係る内外価格差調査」より。主要6都市の中で、20GBの大容量プランでは東京が最も高いことが、菅氏が料金引き下げにこだわる理由とみられてきた
令和元年度(2019年度)の「電気通信サービスに係る内外価格差調査」より。主要6都市の中で、20GBの大容量プランでは東京が最も高いことが、菅氏が料金引き下げにこだわる理由とみられてきた
(出所:総務省)
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 そうしたことから2020年12月3日にNTTドコモは、ドコモショップでの契約やサポートをカットすることで、通信量20GBながら月額2980円(発表当時の税抜き料金)という料金を実現したオンライン専用プラン「ahamo」を投入。これが大きな評判を呼んで以降、KDDIが「povo」、ソフトバンクが「LINEMO」と相次いでオンライン専用プランを投入することとなった。

NTTドコモが2020年12月3日にオンライン専用プラン「ahamo」を発表して大いに注目を集めて以降、競合他社がそれに追随するなどして料金競争が急加速することとなった。写真は同日に実施されたNTTドコモ・今後の料金戦略に関する発表会より(筆者撮影)
NTTドコモが2020年12月3日にオンライン専用プラン「ahamo」を発表して大いに注目を集めて以降、競合他社がそれに追随するなどして料金競争が急加速することとなった。写真は同日に実施されたNTTドコモ・今後の料金戦略に関する発表会より(筆者撮影)
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 それら大手のオンライン専用プランに対抗するべく、楽天モバイルが通信量1GB以下であれば月額0円という、従来の常識を覆す料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を投入した他、MVNOも相次いで従来より低価格の料金プランを打ち出した。菅政権の影響によって、短期間のうちに携帯電話料金が大幅に引き下がったことは確かだろう。