全3093文字
PR

 2020年9月29日、日本電信電話(NTT)がNTTドコモをTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化すると発表し、大きな波紋を呼んだ。低迷しているNTTドコモのテコ入れと国際競争力強化が主な目的だが、菅内閣が掲げる携帯電話料金の引き下げにも少なからず影響を与え、市場競争の加速とは逆の結果をもたらす可能性もある。

低下したNTTドコモの競争力強化が目的

 携帯電話料金の引き下げを強く訴えてきた菅義偉氏が内閣総理大臣に就任するなど、2020年は携帯電話業界に激震というべき出来事がいくつか起こっている。そして2020年9月29日、新たな激震と呼べる出来事が起こった。

 それは業界最大手のNTTドコモを、親会社であるNTTがTOBで完全子会社化すると発表したことだ。その額は約4兆3000億円に上るとのことで、国内企業としては最大のTOBとなることに間違いない。

 先にも触れた通り菅総理が就任して間もない出来事であり、なおかつNTTの最大の株主は政府および地方公共団体であることから、この動きは携帯電話料金の引き下げに向けたものではないかとみる向きも多かったようだ。だがNTTの代表取締役社長である澤田純氏は、同日に実施した会見において、完全子会社化の目的はNTTドコモの競争力強化にあると説明している。

2020年9月29日に実施されたNTT・NTTドコモ共同会見のスクリーンショットより。NTTの澤田氏(左)は完全子会社化によって、グループ内企業との連携を強化しNTTドコモの競争力を強化するとしている
2020年9月29日に実施されたNTT・NTTドコモ共同会見のスクリーンショットより。NTTの澤田氏(左)は完全子会社化によって、グループ内企業との連携を強化しNTTドコモの競争力を強化するとしている
[画像のクリックで拡大表示]

 その理由となっているのはNTTドコモの競争力が落ちていることだ。NTTドコモは新料金プランの「ギガホ」「ギガライト」を導入した影響から、2019年度の決算では営業利益が前年同期比で15.7%減少した。それ以前より利益低下傾向が続いており、携帯大手3社の中で最も利益が低い水準にある。

 澤田氏はこの点を大きく懸念しており、業績回復をNTTドコモ側に任せることはできないと判断したものと見られる。実際、NTTドコモの新社長には元NTT代表取締役副社長の井伊基之氏が就任予定としており、井伊氏の下でグループ内のリソースを積極的に連携することにより、競争力強化を目指すとしている。

NTTドコモの新社長に就任予定の井伊氏はNTTの元副社長であり、NTT主導でNTTドコモの経営を進めることを明確に打ち出した人事となる。写真は2020年9月29日に実施されたNTT・NTTドコモ共同会見のスクリーンショット
NTTドコモの新社長に就任予定の井伊氏はNTTの元副社長であり、NTT主導でNTTドコモの経営を進めることを明確に打ち出した人事となる。写真は2020年9月29日に実施されたNTT・NTTドコモ共同会見のスクリーンショット
[画像のクリックで拡大表示]

 そしてもう1つ、澤田氏は国際競争力の強化も掲げている。ネットワークの技術やデバイス、さらにその上で利用するサービスに関して、現在は米国や中国が非常に強い存在感を発揮する一方、日本企業の存在感は数十年のうちに大幅に低下しており、5Gでも日本の出遅れが叫ばれているのが現状だ。

 しかも現在では固定・移動といったネットワークの種別を問わず、双方が融合した形での競争が進んでいると澤田氏は説明する。そうした中にあって日本から世界を引っ張っていける技術やサービスを提示する上では、NTTドコモ、ひいてはNTT自身が強くなる必要があると判断したようだ。