低価格で利用できるサービスが出てきたことで、急速に注目を集めるようになった衛星通信。米Space Exploration Technologies(スペースX)の「Starlink」が日本でサービスを開始するなど国内でも大きな動きが出てきているが、スマートフォンで衛星と直接通信するにはまだ課題もあるようだ。
Starlinkが突如日本進出を発表
衛星を使うことで世界中のどこからでも通信できるようにする取り組みは古くからあり、国内でも災害発生時などに活用されてきた。だが衛星を打ち上げて運用するコストの高さや、地上から数万kmもの距離がある衛星と通信することもあって、利用コストが高い上に端末側に大型のアンテナを搭載する必要があるなど、様々な制約があって広く活用されるには至っていない。
だがここ最近、その衛星通信を巡る動向が大きく変わってきており、より多くの人が衛星通信を利用できる環境が整いつつあるようだ。理由の1つは約3万6000kmの軌道を飛行する静止衛星ではなく、より低い2000km以下を飛行する低軌道衛星を活用することで、従来よりも大容量かつ低遅延の通信を実現できるようになったことだ。
そしてもう1つは、そうした低軌道衛星を低コストで多数打ち上げられる環境が整ってきたことだ。それをいち早く実現したのが、実業家のイーロン・マスク氏らが設立したことで注目されているスペースXである。同社は独自開発のロケットを用いて多数の衛星を打ち上げることに成功、既に3400基を超える「Starlink」という通信衛星群を構築している。
そしてスペースXは、そのStarlinkを用いてインターネット接続ができる通信サービスの提供も開始している。このサービスはロシアによる軍事侵攻でインフラに大きな被害を受けているウクライナで活用されたことで大きな注目を集めたが、2022年10月にはアジアでは初めて、日本でのサービス提供を開始したことを明らかにしている。
このサービスは衛星と通信するための専用アンテナを屋外に設置し、Wi-Fiルーター型の端末を経由してスマートフォンなどをインターネット接続する。地上から500kmくらいの低い軌道を飛んでいるとはいえ、距離が非常に離れていることに変わりはないので、衛星からの電波を受信するためのアンテナはそれなりに大型で、上空が見通せる場所に置く必要があるようだ。
サービス開始当初、日本で利用できる場所は一部を除く東日本に限られており、利用可能なプラン「レジデンシャル」はアンテナなどハードの価格が7万3000円で、月額1万2300円の料金がかかることから導入のハードルが低いわけではない。だが個人でも契約可能、かつ非現実的な料金ではないことを考えると、衛星通信を非常に身近なものにしたことは確かだろう。