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5Gを見据えた「1+8+N」戦略

 だがファーウェイ・テクノロジーズがHMSのエコシステム拡大に力を入れているのは、GMSの代替だけが理由というわけではないようだ。それを示しているのが、やはり今回の発表会で呉波氏が日本でも推し進めるとした「1+8+N」戦略である。

 これは同社が、5G時代に向けた戦略として2019年に打ち出したもの。「1」はスマートフォン、「8」はウエアラブルデバイスやPC、スマートテレビなどスマートフォンを支えるデバイス、そして「N」はスマートホームデバイスなど多数のIoT機器のことを指している。スマートフォンをハブとして様々なデバイスをシームレスに接続し、AIを活用した新しい生活環境を提供する取り組みになる。

ファーウェイ・テクノロジーズが打ち出す「1+8+N」戦略。スマートフォンを軸として様々なデバイスをシームレスに連携する。5G時代に備えた取り組みになるという。写真は2019年11月14日のファーウェイ・ジャパン新製品発表会より(筆者撮影)
ファーウェイ・テクノロジーズが打ち出す「1+8+N」戦略。スマートフォンを軸として様々なデバイスをシームレスに連携する。5G時代に備えた取り組みになるという。写真は2019年11月14日のファーウェイ・ジャパン新製品発表会より(筆者撮影)
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 そして今回の発表会では、そうした1+8+Nの戦略を意識し「8」となるデバイスの強化も打ち出されていた。実際、今回の発表会ではスマートウォッチ「HUAWEI WATCH GT 2」や活動量計の「HUAWEI Band 4」、ワイヤレスイヤホンの「HUAWEI FreeBuds 3」など、「8」を構成する機器の強化が図られている。

 そして「8」の部分においても、HMSは重要な存在になると呉波氏は説明する。ファーウェイ・テクノロジーズは独自のOS「Harmony OS」を開発し、自社製のスマートディスプレーに採用したことを明らかにしているが、このOSはAndroidの代替というより、幅広いデバイスで利用できることを想定したマイクロカーネルOSであり、主として「8」や「N」の機器で用いられるものになるという。

 そしてHMSはHarmony OS上での活用も考慮した設計になっていることから、仮に米国からの制裁が解除された後もHMSは強化していくとのこと。5Gでスマートフォンだけでなくより幅広い機器の利用が増えることを見越した、独自の新たなエコシステムを構築していきたい考えのようだ。

 こうした取り組みからは、ファーウェイ・テクノロジーズが5G時代に来るであろうスマートフォンの「次」を見据えた備えを進めていることが見えてくる。そうしたことから米国の制裁が今後も続いた場合、同社は5Gのサービスを皮切りとして日本でもHMS搭載のスマートフォン投入を積極化し、周辺デバイスとの一体提供によってHMSの市場定着を図る可能性が高いと考えられる。

 それだけに鍵となるのは、同社が後発という立場でアプリ開発者の支持をいかに集めるかということ。エコシステム構築に向けた日本での本気度が大きく問われることになりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。