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資金が少ない地方では導入の動機付けが必要に

 この取り組みから見えてくるのは、5Gが持つ特徴の1つである高速大容量通信だけでも、うまく活用すれば地域活性化に向けた取り組みに有効活用できることだ。5Gの産業用途での活用といえば、自動運転やIoTに関わる低遅延、多数同時接続に注目が集まりがちだ。しかし、サービス開始当初の5Gは、4Gと5Gが一体で運用されるノンスタンドアローン運用となるため、これらの要素はまだ実現できない。

 だが高速大容量通信で高精細な映像を伝送できるだけでも、今回のような軽種馬の見守りだけでなく、遠隔医療においても患部を鮮明な映像で確認し、より的確な指示を出せるなどのメリットが生まれてくる。しかも5Gでは、屋外での高速通信も可能になるなど有線のネットワークより柔軟性が高いことから、屋外での見守り用途など、幅広い用途への対応が期待できるだろう。

 ただ一方で気になるのは、それを実現するためのコストを地方の企業や自治体がどこまで支払えるのか、ということである。例えば、今回の実証実験に使用した8K対応のカメラなどはシャープが開発中のプロ向けのものを使っていることから、まだ値段は明らかにされていないものの、決して安価ではないことが予想される。

今回の実証実験に使われた、シャープ製の8Kカメラ。開発中で価格は決まっていないそうだが、プロ向けとなるため安くないと予想される。写真は2019年11月13日の「8Kライブ映像を活用した軽種馬育成支援の実証試験」より(筆者撮影)
今回の実証実験に使われた、シャープ製の8Kカメラ。開発中で価格は決まっていないそうだが、プロ向けとなるため安くないと予想される。写真は2019年11月13日の「8Kライブ映像を活用した軽種馬育成支援の実証試験」より(筆者撮影)
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 地方の多くの企業や自治体は、大都市部の自治体や大企業などとは異なり、資金が潤沢だとは言えない。それゆえ生産性や売り上げの向上、新ビジネスの開拓、あるいは業務効率化によるコスト削減などにつながらなければ、高額な機材を導入するモチベーションにはつながらない可能性があるのだ。

 だがそうした機材の導入が進まなければ、地方の産業のデジタライゼーションも進まないことにもなる。それだけに地方での5Gの有効活用を進める上では、ネットワーク整備だけでなく、それを用いて具体的な成果が出せることを明確に示すための取り組みが、積極的に求められることとなりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。