総務省の有識者会議「競争ルールの検証に関するWG」で、スマートフォンを直接値引きして激安価格で販売する、いわゆる「1円スマホ」の見直しに向けた議論が始まった。行政が長きにわたって問題視しているスマートフォンの大幅値引き販売だが、法の目をかいくぐってでも復活してしまう要因はどこにあるのだろうか。
問題の対処に動く公正取引委員会
ここ最近、いわゆる「1円スマホ」に関する行政の問題意識が高まっているようだ。1円スマホとは、スマートフォンを大幅値引きして「一括1円」など極端に安い価格で販売することだ。だが、現在の値引き手法は電気通信事業法で定められた値引き規制に触れない形で実施されている。
具体的にはスマートフォンの価格自体を大幅に値引いて誰でも安く買えるようにし、それに通信契約にひも付けて法の範囲内で値引きしたり、端末購入プログラムなどを組み合わせたりすることで、非常に安い値段でスマートフォンを購入できるようにしているわけだ。電気通信事業法では通信契約とセットでの販売により端末価格を値引くことは禁止されているが、端末そのものの価格を大幅に値引くことは、物販の範囲内なので規制されていない。
そのような背景から、2021年半ばごろからこうした販売手法が急増し、現在携帯電話ショップや量販店では当たり前のように実施されている。だがこの値引き手法では、回線契約しなくてもスマートフォンを安く買えてしまうので、それに目を付けた組織的な「転売ヤー」がスマートフォンを買い占めるなど問題が多発しているのが現状だ。
この1円スマホを問題視しているのが行政である。とりわけ2019年の電気通信事業法改正に際して「2年をめどに端末値引きを事実上根絶する」と、スマートフォンの大幅値引きの撲滅に強い意欲を示していた総務省は1円スマホに強い懸念を示しているが、電気通信事業法の範囲では規制ができず手を出せない状況が続いていた。
そこで動きを見せたのが公正取引委員会である。公正取引委員会は1円スマホの販売手法が「通信料金と端末販売代金の分離下においては、不当廉売につながるおそれのある販売方法」として2022年8月9日に緊急調査を実施することを発表、現在その調査が進められているもようだ。