「畜産テック2019」では野生動物を食肉として活用する「ジビエ」を進めるテクノロジーを紹介した。シカやイノシシが増え過ぎると畑を荒らしたり家畜に病気をうつしたりするリスクが高まる。生態系のバランスが崩れると食料供給にも影響が出るが、そのリスクは野生動物の増殖以外にも存在する。例えば地域固有の動植物の密猟や密輸だ。AI(人工知能)で瞬時に希少種を見分けることで密猟・密輸を未然に防ぐ取り組みが始まっている。
天然記念物のリュウキュウヤマガメである確率は90%――。環境省沖縄奄美自然環境事務所とNTTドコモはスマートフォンのカメラで撮影した画像から希少な動植物かどうかを自動で判別するAIシステムの開発を進めている。2019年5月21日に密猟を防ぐためのパトロール現場や空港内の荷物検査場などで実証実験を始めた。専門知識がない職員でも即座に希少種の判別ができれば密輸などを未然に防げる。
今回の実験で対象とするのは国の天然記念物である「リュウキュウヤマガメ」や「ヤエヤマセマルハコガメ」、「ヤエヤマイシガメ」の3種類だ。いずれも日本では沖縄県にのみ生息する種である。
3種類のカメの画像に加えて野生で生息するアカミミガメ、一般に飼育用途などで流通している2種類のカメの画像を計1000数百枚用意した。角度を変えて撮影したり加工を施したりした画像をNTTドコモが開発するAIに学習させた。希少種のカメの画像は公益財団法人沖縄こどもの国およびNPO法人どうぶつたちの病院沖縄の協力のもと撮影し、収集した。