米中貿易摩擦に見られるように、世界経済は米国と中国を基軸としたブロック化が進む「新冷戦」の様相を呈している。そんな時代に製造業のサプライチェーンはどうなるのか。調達・購買業務コンサルタントの坂口孝則氏が解説する。
未来調達研究所 取締役

米中貿易摩擦に見られるように、世界経済は米国と中国を基軸としたブロック化が進む「新冷戦」の様相を呈している。そんな時代に製造業のサプライチェーンはどうなるのか。調達・購買業務コンサルタントの坂口孝則氏が解説する。
一般に、リスクを低減するために、「マルチソース」と呼ばれる手法が取られる。簡単にいうと、生産場所や調達先の分散化だ。日本と中国で分けて生産する。あるいは、日本と中国の両方から調達する。そうすれば、どちらかに万が一の事態が生じても、何とか乗り切ることができる。しかし、東日本大震災を受けて実施したアン…
もはやサプライチェーンから中国を完全に外すことは難しい。だが、依存度を少しでも下げるとともに、現地調達・現地生産への回帰を再考する。それこそが、グローバリズム(地球主義)が広がった先のアンチグローバリズム(自閉主義)といえる。
人が移動できないのだから、新型コロナウイルスの影響はイベントだけにとどまらない。企業活動にも悪影響を及ぼしている。中国に工場を持つトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、マツダ、ドイツのフォルクスワーゲン(Wolkswagen)などが稼働停止、あるいは一部車種だけの生産を余儀なくされている。任天堂は「N…
全面的に中国製を回避できるならともかく、実際には中国はグローバルサプライチェーンの一部に組み込まれている。中国を今後も完全に拒否できるわけではない。そこでこの機会に、中国製の品質は悪いのか冷静に考えてみたい。
これから影響が拡大すると思われるのは、各企業のサプライチェーンだ。仮に感染者が日本に入国していなくても、中国で工場が止まるかもしれない。あるいは、日本国内でも工場作業者の罹患が確認されれば、その工場は稼働を止めるだろう。どんな国の小さな工場であっても、そこで生産している製品は世界中に輸出される基幹…
以前、私が自動車メーカーで働いていたときのことだ。出勤すると、かならずロッカーに行き、そこで着替える。事務職だけではなく、研究者や設計者などもいた。そうすると、耳を澄まさずとも、色々な会話が聞こえてきた。特に、着替える人間が少なく、私の存在に気づかない社員同士の会話からは、様々な固有名詞が聞こえて…
A社は外国人労働者を優遇しており、人間関係は良好だし、福利厚生もしっかりしていたことから、B社の訪問を歓迎した。「どうぞ、どうぞ、何でも見てください」と受け入れた。B社は、A社で働く外国人労働者との個別面談を希望した。A社は恥じるところがないので、それも許可した。何といってもB社はA社にとって大事…
私は、中国が「中国製造2025」をあまり公的に発表する機会が少なくなったのを、むしろ畏怖している。私には、中国製造2025は、世界の組み立て工場としての立場から脱却し、日本や韓国が担ってきた電子・電気部品工場としての立場を奪取する施策に思える。米中経済戦争の中で、中国は中国製造2025の掛け声を潜…
先日、テレビ番組に出演していたら、韓国の美容整形事情について特集が組まれていた。韓国の美容整形市場が興隆しているのは、日本人でも知っている。多くの若い女性が美容整形に殺到しても、もはや驚くに当たらない。
トヨタ自動車が驚きの決算を発表した。2019年度上期(2019年4~9月)の連結売上高は、この大変な経済状況の中、前年度同期比4.2%増の15兆2856億円だった。絶対額で6115億円も増えているのに、もともとの売上高が大きくて比率だと数%しか伸びていない計算になることに卒倒してしまう。営業利益の…
この前、韓国旅行に行ってきた女性と話をした。報道では、日本と韓国の間に嫌悪感情が広がっているといわれる。しかし、その女性はそんなことを韓国内で全く感じなかったという。良くも悪くも、大衆はそんなことを感じて生きてはいない。
私がお勧めしたいのは、こういった比較を多国間で実施し、少なくとも現時点における最適な生産・調達のシミュレーションしておくことだ。よく机上の空論だという人がいるが、そもそも机上の空論すら計算していない企業が多々見受けられる。
米国は、ついに中国への制裁関税第4弾を発動する。これで、米国が中国から輸入する全ての品に関税がかかることになる。既に2019年9月1日からスマートウオッチやテレビ関連機器が対象となっており、さらに同年12月15日からは「iPhone」のようなスマートフォンや、ノートPC、ゲーム端末も対象に加わる。…
旭酒造は、純米大吟醸酒「獺祭(だっさい)」の自主回収を発表した。アルコール度数にばら付きがあると判明したからだった。基準の16度に対し、12~17度とばら付いていた。さらに、その理由は「撹拌(かくはん)」工程を怠ったことにあった。
先日、中国から来た企業一行に講演をする機会があった。役人ではなく企業人なので、ざっくばらんに話せる雰囲気があった。私は、米中経済戦争とそれに付随するはずの世界経済失速についての懸念を何度も述べた。一行は深くうなずいてくれたのが印象的だった。ただし、「米中経済戦争」ではなく「中米経済戦争」に変更した…
先日、日経 xTECHに掲載された富士通・時田隆仁社長のインタビューは衝撃的だった。伝統的大企業のトップの口から、大盤振る舞いの発言が飛び出した。若手でも優秀な人材には、「年収は3000万~4000万円」に達することもあり得る制度を構築する運びだという。命運を握るような人材の場合は、市場価値と比較…
日本政府は、輸出管理上の優遇措置が受けられる「ホワイト国」(今後は「グループA」に名称変更)から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。既にフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの3物質について輸出手続きを厳格化していたが、今後はより多くの部材で輸出時に個別の許可が必要となる。
私は調達・購買業務のコンサルティングに従業している。日本では大震災や大雨の被害を受けるので、災害のたびに話題となるのは調達先の分散だ。リスクマネジメントの一環として取引先を地理的に2社に分けておく。1社が被災しても、もう1社が残っていれば生産を続けられる。これを複数社購買、あるいはマルチソース化と…
私はかつて製造業で働いていた。調達業務に従業していた。ある日のこと、「これ造れるところないかな」と設計者から図面を渡された。金型の図面だった。図面のコピーで、作図者の社名が黒く塗り潰されていた。その金型図面は、取引先から入手したものだった。
日本ではドローン配送の難しさがクローズアップされた。例えば、ドローンが街中に飛べばどうなるか。カメラを有するドローンがマンションの隣を飛べば、プライバシーの侵害になるかもしれない。