全3836文字
PR

 衝撃的な数字が発表された。2020年2月の「JPモルガン・グローバル製造業PMI(Purchasing Managers' Index、購買担当者指数)」は47.2と、前月から3.2ポイントも下がったのだ。同指数は世界製造業の景況感を表すもので、50超は景気が上向き、50未満は景気が下向きであることを意味する。

JPモルガン・グローバル製造業PMIの推移(出所:JPモルガン・チェース、IHSマークイット)
JPモルガン・グローバル製造業PMIの推移(出所:JPモルガン・チェース、IHSマークイット)
[画像のクリックで拡大表示]

 通常、同指標は毎月0.5~1ポイント程度しか変動しない。それが今回は3ポイント以上も落ち込んだ。直前の3カ月は連続で50を超え、景気は改善傾向だったにもかかわらず、である。新型コロナウイルスが引き起こした“中国ショック”が世界中に広がり、急速に景気が悪化しているのだ。ちなみに47.2というのは、リーマン・ショックの余波が色濃く残っていた2009年5月以来の低水準だという。

 2020年3月5日に開かれた日本政府主催の未来投資会議でも、サプライチェーンが議題に上がっていた。そこでは基礎資料として、東京商工リサーチが2月に国内企業を対象に実施したアンケート調査の結果が使われていた。同調査で、新型コロナウイルスへの対応として最も多く挙がったのは「中国以外に所在する企業からの調達強化」(36.9%)。「中国への新規進出計画の凍結・見直し」(7.6%)や、「中国拠点(武漢除く)の撤退・縮小」(3.9%)といった対策を検討している企業もあった。財務省の貿易統計によれば、2019年は日本の輸入全体の23.5%、および輸出全体の19.1%を中国が占めていた。その中国への新規進出を取りやめたり、中国から撤退したりするかもしれないというのだから、影響の大きさは計り知れない。

 中国当局によれば、新型コロナウイルスで操業を停止した工場のうち5~7割は通常稼働に復帰したという。これは2月下旬時点の発表だが、どうも感覚と合わない。私が属する未来調達研究所は、新型コロナウイルスの影響に関するサプライチェーン関係者への調査を継続的に行っている。大手企業の一部は通常稼働に戻りつつあるようだが、大半の企業はいまだに中国からの調達品が滞っており、途方に暮れている。

 よくよく中国の事情を聞いてみると、中国当局は大手企業だけを調査しているようで、その下請けや孫請けに当たる中小零細企業の実態を正確に発表していない。大手を除くと、稼働率は2~3割。記事執筆時点ではそれから1週間がたったものの、やはり3~4割しか稼働していないのではないか。それが現場の感覚値と近い。

グローバリズムが引き起こしたアンチグローバリズム

 私は前回、今起きていることは「グローバリズムが広がった先のアンチグローバリズム」ではないかと書いた。各社は、かつて自国中心だったサプライチェーンを世界に分散させ、中国を最終出口とするアセンブリー体制を作り上げた。しかし、中国では、古くは食品消費期限切れから、近年の米中経済戦争、そして今回の新型コロナウイルスに至るまで、多くの課題に直面してきた。

前回:「金型の図面が中国にしかない」、新型コロナで機能不全化した製造業

 もはやサプライチェーンから中国を完全に外すことは難しい。だが、依存度を少しでも下げるとともに、現地調達・現地生産への回帰を再考する。それこそが、グローバリズム(地球主義)が広がった先のアンチグローバリズム(自閉主義)といえる。