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生産分散していたらジョブズの指示は伝わったか

 では、アップルが期待するような、同一企業内の分散生産はどうだろうか。これも幾つかの課題がある。一般論でいえば、「指示」「在庫」「金型・設備」「調達コスト」「物流コスト」などだ。

 スティーブ・ジョブズが存命だったとき、iPadの細部に満足できず、鴻海にただちに修正の指示を出したといわれる。鴻海が誇る大量の従業員はそこから生産に取り掛かり、ジョブズの依頼に応えた。

 もし同一製品の生産地が分散していたら、このような指示がそれぞれの拠点に異なる形で伝わり、拠点間で齟齬(そご)が生じる恐れがある。かといって、製品ごとに生産地を分散させても、それは各製品が一極集中のリスクを負うだけである。

 加えて、生産地が分散すれば、必然的に製品在庫や調達品在庫も増えていく。金型や設備の多重化により、減価償却費も積み上がる。iPhoneのような大量生産品であれば償却費も問題にならないかもしれないが、それでも段取り時間、労働者への教育コストなどが多重化していく。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)
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 国が変われば、現地調達や輸入の調達コストも変わってくる。同一製品なのに、生産国によって完成品コストが乖離(かいり)する。先進国に輸出される製品に、複数の生産国、複数の原価が存在することになる。当然ながら、物流コストも異なる。