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 2019年10月9~11日に開催された「日経 xTECH EXPO 2019」(主催は日経BP)に私も講演者として参加してきた。私の私のテーマは「米中新冷戦時代のサプライチェーン」。失礼ながら、ほとんど人は集まらないものだと信じていた。なぜなら「サプライチェーン」という単語自体、まだ専門性を帯びていて人口に膾炙(かいしゃ)していない。

 そう思っていたら、申し込み時点で満員だという。とはいえ、申し込みだけで実際にはほとんど聴講者はいないだろうと思っていたら、ほぼ満員になった。

 かつてサプライチェーンに従業していたとき、日が当たる部門とはいえなかった。だが、米中の経済戦争でサプライチェーンがこれほど注目されるとは、隔世の感がある。当連載で何度か書いてきたが、今回はこれまでの中間経緯と、今後の最適地生産をもくろむための考え方について書いてみたい。

米中経済戦争のゆくえ

 米国は中国との閣僚級貿易交渉の結果、2019年10月に予定していた追加関税引き上げは見送るとした。それでもクリスマス商戦後の12月に予定する追加関税は発動を取り消してはいない。あくまでこれ以降の協議次第とするスタンスを崩さなかった。

 ただし、中国は米国の農作物を輸入することも決めたため、小休止した感が広がった。株式市場も好感触を示し、株価は上昇した。もちろん、米国の産業界も手放しで称賛するわけにはいかないだろうが、一定の成果は歓迎している。

 これまで中国がグローバル貿易自由化の大切さを語り、米国が自国第一主義を唱えるという、思想的に奇妙な状況が続いていた。米国は5G(第5世代移動通信システム)の覇権を握るために、中国の台頭を許せなかった側面はあるだろうし、また米国からの技術漏洩も重大な関心事項だった。

 今回、米国にとって懸案だった、米国から中国への技術移転や、中国の市場開放、中国の知的財産権侵害などについても、両国はある程度の合意を見たとされる。

 ドナルド・トランプ米大統領の関税政策は、1930年の「ストームハウリー法」の再来と見なせる。当時、米国は自国内の農業従事者の雇用を守るために、海外からの輸入農作物に大幅な関税を課した。それは平均40%に至るものだった。

 多くの国は米国に対抗するために、報復関税で応じた。結果、米国経済は大幅に悪化し、農業従事者の雇用維持以上のダメージを受けることになった。その歴史の教訓から学ぶのであれば、きっと、技術移転などについてある程度合意した後は、自由貿易にかじを切り直さないと、自国経済が打撃を受けることになるだろう。

「米中どっちか」ではなく「米中どっちも」

 私は以前、電機メーカーで働いていた。中国にも工場があった。

 部材は世界中から集められ、そして中国で組み立てられる。中国は現地調達率が上がっている。だから、私の経験は既に昔話にすぎない。とはいえ、半導体などの中核部品は、まだまだ中国外から運ばれ、それを中国で加工して、最終商品が米国や欧州連合(EU)圏などに輸出される。

 輸出されると、その完成品の最終価格が計上される。だから、米国が中国との貿易赤字が異常な額に膨らんでいるといっても、それは中国の付加価値相当分をそのまま表現しているわけではない。中国は、アジアの出口を担っているにすぎない。もっといえば、中国による付加価値は少ないため、対中国の貿易赤字が実態以上に膨らんで見える。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)

 豊富な労働力によって、中国は世界の工場と呼ばれた。そしてその勢いはまだ続くように思われる。そして、中国はもはや工場だけではなく、マーケットとしての意味も大きい。

 よく二者選択かのように「日本は中国と米国のどちらに付くのか」と論じる人がいる。答えは「あれか、これか」ではなく、「あれも、これも」しかない。だから、「中国とも、米国ともうまくやっていく」以外に選びようがない。

 中国を工場としても、マーケットとしてもうまく活用していく。さらに、米国は大事なお客さんだから、そこにも最適なコストで商品を販売していかねばならない。当たり前の結論だ。

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